儚く散る恋なんて、絶対にしない ページ13
ここは人間の住む遥か遠く――
深い深い、海の底。
誰の目にも触れない、静かなこの場所で彼女たちは暮らしている。
輝くウロコ。大きな尾ひれ。優雅に舞うその様は…そう、まさに人魚そのものだ。
なぜか光の届くこの場所は彼女たちの隠れ家。
誰に気づかれるわけでもなく、ただひっそりと生き、死んでゆく。
このお話は、儚くも美しい人魚のある一人の物語。
人魚はメスしか生まれてこない。
神様が一滴の涙を海に落とした時、命を持ったそれは深海へとたどり着き、真珠やサンゴのかけらを殻にして生まれるその日をじっと待つ。
こうして人魚は生まれる。
人魚は不思議な生き物で、誰にも恋をしない。いいや、できない。
『人魚姫の呪い』
人に恋をした人魚姫。しかし、その想いは叶わず泡となり消えていった。
人魚姫は恋をするなどという無謀な過ちを同胞たちに繰り返してないと願い、呪いをかけた。
恋をすると消えてしまう呪いを――
恋情を奪われ、恋心すら抱けなくなった私たち。
でも、それを疑問に思ったことはない。
(人魚を見つけた人間は、人魚を焼き殺したと聞いたわ。そんな蛮族との恋?まっぴらごめんよ)
私には夢がある。
上を見上げると眩しくも美しい海が広がっている。
じゃあ、その上は?深海にも降り注ぐ暖かな光の正体は?
たくさん知りたい。もっと見てみたい。
海の上に広がる世界を―――
(なのに、みんな反対ばっかり。アンジェ様は私を子ども扱いするし。私はもう立派な大人よ。外に出たって大丈夫だし、自分の身を護るすべくらい……)
昨日のことを思い出す。
ボサッとしていた私を食べようとしていたサメ。
真っ先に気づいたアンジェ様に助けてもらわなければ、私は今頃……。
「A、どうしたの?」
『アンジェ様…。外に出たいです。もっといろんなことを知りたい』
「それはダメよ。人間に見つかれば…」
『殺されてもいいわ!夢のためなら命だって惜しくない!!人間は冒険のために命を捨てると聞いたわ』
「誰もかれもがそういうわけじゃないの!それに、私たちは人魚よ。人間じゃないんだから、真似事なんて…」
いつもいつも、私の夢の邪魔をする。
このままじゃ、私本当に――
決意を決めた私はアンジェ様に言った。
『アンジェ様の言うことなんて聞きません!』
「待ちなさいッ!」
アンジェ様から逃げるように上へ上へと昇る。
(どんな世界が待っているんだろう……)
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くるみ(プロフ) - MIZOREさん» はじめまして!コメント&応援ありがとうございます。これからも二人でいろんなお話を出していけたらと思ってますので、よろしくお願いします。 (2017年9月13日 18時) (レス) id: 1b7b0b02d0 (このIDを非表示/違反報告)
MIZORE - 暁さん、くるみさん、はじめまして!とても感動できる内容で、読みやすかったです。更新頑張ってください! (2017年9月13日 18時) (レス) id: a68bb744ad (このIDを非表示/違反報告)
暁(プロフ) - 星月夜さん» 心あたたまるコメントをありがとうございます!今後も頑張って二人で更新していこうと思うので、この作品をよろしくお願いします(*- -)(*_ _)ペコリ (2017年9月11日 7時) (レス) id: 23374c4c5d (このIDを非表示/違反報告)
星月夜 - 短編集なので当たり前なのですが、一つ一つが簡潔に書かれているので読みやすいです!最初のお話は本当に感動しました! (2017年9月10日 23時) (レス) id: b0ad28a90c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:くるみ&暁 | 作者ホームページ:
作成日時:2017年9月10日 12時