命より大切なものを見つけるために…

姫様と二人の小さな物語(9) ページ9

？side

シンドリアの日差しが窓から入り込んでいる。


広い部屋の中で、寝具に横たわっているのは…

桃色がかった白い、ふわふわとした髪。整った顔。雪のように白い肌。

美しい人形のような少女。


窓から風が入り込む。

「ん…」

少女が目をあけると、眩い光とカラカラとした熱い空気が迎えてくれた。


(ここは…？私、生きてる…？)


疲労などが溜まり切った体は重く、起き上がるのも辛かった。

手のひらを開いたり閉じたりして、自分に生があるのを確認する。


(大丈夫…まだ生きてる。やれることがある…)


少女の瞳に小さく意志が宿ったように見えた。


立ち上がろうと、足を動かす。

床に足を付けたところで、正面の扉が開いた。


(誰…？)


あまり、強い者の気配じゃない。恐らく、非戦闘員…

少なくとも少女を追ってきた兇手ではなさそうだ。


入ってきたのは、女の人。後姿しか見えていたいので、歳はわからない。


(綺麗な…髪。見たこと……ある…)


光り輝く金色の糸のように、綺麗で美しい金髪。

窓から差し込む光が、波打つ癖のある髪をより美しく見せている。


振り向いた女の人は、少女より少しばかり年上のように見えるがあまり変わらないような気もする。


『あら？もう起きても大丈夫なのね』


微笑む女の人は天女のように美しく、日差しのせいもあってか、光り輝いているようにすら見える。


(この人…知ってる……)


宝石を閉じ込めたような澄んだ瞳。

少女よりも大人びた、整った顔。真珠の様に白い肌に、ほっそりとした体。


(大姫様…)


その人は、昔少女が一度だけ会ったことのある…家出をして戻らなくなった主(あるじ)ととてもよく似ていた。


(でも…違う)


少女の主…大姫と呼ばれたその人と、目の前にいる人は違う。


大姫様の瞳はアメジスト色の星を閉じ込めたように眩く、美しいものだった。

目の前の人は、サファイア色の綺麗な瞳。でも、眩いとはまた別の…

そう、例えるなら月のような落ち着いた静けさのある美しさ。


よく見ると、顔も体も少し違う。髪も主は癖のない髪だったように思う。大姫は美しく、それでいて妖艶な感じがした。


目の前にいる人は鈴蘭のような、儚げない…触れると消えてしまいそうな花。

大姫は、全てを魅了する、危うく美しい花。


見た目は似ていても、二人は全然違う。別物の花。


(戻らなきゃ…)


戻って探さなければ。

大姫亡き今、少女の…皆の新たな主となった人を。

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