姫様と二人の小さな物語(35) ページ35
「話しとは…?手短に願います」
「嫌われてるなぁ〜」
苦笑いを浮かべる男。
一見弱そうに見えるのに、これでそこそこ強くて使えるのだから不思議だ。
なんというか、覇気がない。
「では、単刀直入に。Aのことは嫌いですか?」
「は?」
「嫌い、ですか?」
なんていう答えにくい質問。
何を考えているのだ、この男は。
「別に……」
「誤魔化さないでください」
「好きでも嫌いでもありません」
「本当に?なんとも思わないんですか?血のつながった兄妹でしょう?」
「お前、あの参事を見ておいて、よくそんなことが言えるな」
「互いに許し合ったからこそ、貴方達は傍にいるのでしょう?なら、もう少し歩み寄っていただきたいのです」
許し合った?あいつが俺を……?
そんなはずがない。家族を惨殺したのは紛れもなくこの俺だ。
あいつがそれを許すとは思えない。気のいい奴だから、きっと仕方なく許したことにしてるんだ。
心の底では憎んでる。
その証拠に、いつも恐れるような目で見てくる。
歩み寄る?距離をあけているのはあいつの方だ。
「あなたがいつもつれない態度で、無愛想で、氷のような目で睨んできても、Aはあなたのことが好きですよ。いつも、かける言葉を探しています。どうすれば、関係が改善するのかといつも相談してきます」
「……嘘でしょう」
あいつがそんなこと…思うはずがない。
俺はあいつに……
「あなたも…Aのことは好きでしょう?偽りの兄弟だったかもしれません…でも、ほんのかけらも愛情は湧きませんか?今度は本当の兄弟になろうとは思いませんか?」
本当の…兄妹……
考えたことも無かった。
愛情などひとかけらもなかった檻の中で過ごした時。
偽りの兄弟…さも、愛しているかのように振る舞った日々。
そんな日々を塗り替えろというのか、この男は――
「私はあなたに笑っていてほしい。息子に笑いかけるように。とても嬉しそうに話すので、見てみたいのです。貴方の嘘偽りのない笑顔を。もう、過去の自分を許しませんか?貴方は変わったのだから…」
「あいつがそれを望むと思いません」
「望んでいますよ。毎日、毎日、今か今かと待っています。貴方と笑い合える日々を、ね」
それだけ言って去っていってしまった。
望まれているとは思わない。ただの奴の詭弁だ。
わかっているはずなのに、なぜこんなにも思いがこみ上げてくる?
まるで、その言葉を待っていたかのように――
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暁(プロフ) - 星月夜さん» ありがとうございます!更新遅くてすみませんm(_ _"m)ウィールスさんの出番も今後増えていくと思うので、今後もよろしくお願いいたします。 (2017年9月18日 0時) (レス) id: 23374c4c5d (このIDを非表示/違反報告)
星月夜 - 更新がまた始まって嬉しいです。ウィールスさんのなかなか素直に慣れないところ大好きです(о´∀`о) (2017年9月17日 23時) (レス) id: b0ad28a90c (このIDを非表示/違反報告)
暁(プロフ) - くるみさん» すみません。完全に設定いれるタイミング逃してしまいました。(*- -)(*_ _)ペコリ (2017年9月17日 17時) (レス) id: 23374c4c5d (このIDを非表示/違反報告)
暁(プロフ) - くるみさん» ホントにね…苦笑 貴重なご意見ありがとうございます♪参考にさせてもらうね! (2017年6月3日 6時) (レス) id: 23374c4c5d (このIDを非表示/違反報告)
くるみ(プロフ) - 暁、今まで二週間ぐらいバタバタしてたけどお疲れ様でした!やっと落ち着けるね(笑)私的には設定書いてもらえたらありがたいです! (2017年6月2日 23時) (レス) id: 1b7b0b02d0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:暁 | 作者ホームページ:
作成日時:2017年4月24日 15時