姫様と二人の小さな物語(28) ページ28
『待ってください、ジャーファル!どこへ――』
力強い手が私の腕を話さない。
あの後、半ば強引にジャーファルに部屋から連れ出され、急ぎ足で歩くジャーファルにどこかへ連れていかれている。
ジャーファルの歩幅と私の歩幅じゃ、違いが大きすぎる。
ジャーフルは速足で済んでも、私は少し走らなければならない。
(ジャーファル……?)
振り返らない彼を見つめ、胸が締め付けられる。
こんなに寂しそうな背中、始めて見る。
どのくらい進んだのだろう?
少し息が切れてきた私は、ジャーファルの手を無理やり振りほどく。
『ジャーファル……どうした、のです……?』
呼吸を整えながら、ジャーファルに問う。
すると、やっと振り返ったジャーファルがいきなり抱きついてきた。
『え?あの……』
「黙って」
困惑して、何が何だかわからない。
幸いなことに、人は誰もいない。いや、ジャーファルが人気のない場所まで私を連れてきたんだ。
(誰もいないけど……これはさすがに恥ずかし)
『痛ッ……』
きつくしまってくる腕。恥ずかしさもどこかへ行ってしまうほど、力強い…男の人の腕。
ジャーファルに触れられるのは好きだ。抱きしめられると、恥ずかしいのに心地いい。互いの体温が溶け合うようで、鼓動も聞こえそうで……心さえも通じている気になれる。
でも、今は……ジャーファルの考えがわからない。
どんどん締まってくる腕が怖いとすら思ってしまう。
『ジャーファル…苦しッ、もう、離れて……』
逃げようとすると、よけい締まってくる。
(……え?)
先程まで気づかなかったが、ジャーファルの方が少し震えているような…
いや、気のせいじゃない。ジャーファルに意識を傾けると、震えて怯えているのが手に取るようにわかった。
(どうしたの?)
わからない。でも……
そっと手を背に回し、ゆっくり撫でる。
ジャーファルは抑えていたものが溢れだすかのように、聞いたことも無い荒々しい声で叫んだ。
「恐ろしかったッ!話を聞いたとき、酷く恐ろしく思った!!」
『……ッ』
「あなたは特別な人間で、私のもとから離れていくのだと思った!花の様に短く儚い命を散らして、私のもとから去っていくとさえ思えた!!」
震えた声。荒々しい息。
かける言葉が見つからない。
「おいていかないで下さい……私には、貴方達しかいないんです……」
今度は消えそうなほど弱々しい声。
(おいてなんて…行かないわよ……)
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暁(プロフ) - 星月夜さん» ありがとうございます!更新遅くてすみませんm(_ _"m)ウィールスさんの出番も今後増えていくと思うので、今後もよろしくお願いいたします。 (2017年9月18日 0時) (レス) id: 23374c4c5d (このIDを非表示/違反報告)
星月夜 - 更新がまた始まって嬉しいです。ウィールスさんのなかなか素直に慣れないところ大好きです(о´∀`о) (2017年9月17日 23時) (レス) id: b0ad28a90c (このIDを非表示/違反報告)
暁(プロフ) - くるみさん» すみません。完全に設定いれるタイミング逃してしまいました。(*- -)(*_ _)ペコリ (2017年9月17日 17時) (レス) id: 23374c4c5d (このIDを非表示/違反報告)
暁(プロフ) - くるみさん» ホントにね…苦笑 貴重なご意見ありがとうございます♪参考にさせてもらうね! (2017年6月3日 6時) (レス) id: 23374c4c5d (このIDを非表示/違反報告)
くるみ(プロフ) - 暁、今まで二週間ぐらいバタバタしてたけどお疲れ様でした!やっと落ち着けるね(笑)私的には設定書いてもらえたらありがたいです! (2017年6月2日 23時) (レス) id: 1b7b0b02d0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:暁 | 作者ホームページ:
作成日時:2017年4月24日 15時