命より大切なものを見つけるために…

姫様と二人の小さな物語(26) ページ26

「最年長の翁は1400年たった今なお、元気に生き続けておられますよ。空気も澄んでいますし、時がたつのも遅い…我々の里は神秘のベールで守られているのです。でも…」


視線を下に落とし、心底悔しそうに顔を歪めて少女は続けた。


「でも、高位の力の使い手…里を治めるに値するほどの高い神力を持つ方々は、その力と代償にとても一生が短く…短命の方がほとんどです。大姫は外界で生活をしていたので例外ですが、ほとんどは20〜30の間に力尽き、死んでゆきます」

『え…』

「力は凄まじい物です。天候を変えたり、悪しきものを封印したり、人々を癒したり…人によって違いはありますが、何でもできてしまう方だっています。

外界の魔法など、遠く及ばない…。恐らく、金属器と呼ばれるものよりも強力な力を高位の力の使い手は持っています。

異能を持つ者を重宝するのは、里がその者たちの力によって守られているからです。

しかし、その力は使うほどに術者の命を削ります。

小さな傷口を塞いだり、微量な雨を降らせたり…そういったことでも、微量でありますが命を削るのです。

里を守るために、大掛かりな術ばかりを使う使い手たちは…長生きできないのです。

もちろん、異能を持つ方でも長寿の方はいますが…」



少女の話をただただ理解しようと必死になる。


(異能を持つものは…短命。なら…私も？)


両手を交互に見つめる。

何度も、何度も…力を使い続けた。

そんなものだって知らなかったから…。


(…子供たちは)


異常なほどの成長を続ける息子、どんどん感情の削げ落ちていく娘―。


あの二人は？


『ねぇ…どうしたら、長く生きることができるの？』

「…先程の言ったように、力は使えば命を奪う。つまり、力を使う回数を減らせば、ある程度生きることができます」

『そう…』


弱々しく返事をしたとき、扉がノックされ、次いでジャーファルが部屋に入ってくる。


『ジャーファル？仕事はどうしたのですか？』

「イケナイ人ですね、貴方は。夫の私を差し置いて、他の方と一緒にいるなんて…。おまけに、すぐ仕事仕事と言って、私を追い払おうとするんだから」

『な、何を言っているのですか！？もう、ジャーファルの意地悪！』


ジャーファルは「林檎みたいですよ」なんて、くすくす笑っている。


「…実は、貴方に聞きたいことがあって来たのですよ」


少女に向き直るジャーファルの顔は、氷のように険しく、悲しそうだった。

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