姫様と二人の小さな物語(11) ページ11
『あ、なた…一体ッ……』
慌てふためく私を、少女は黙って見つめている。
二人の間にこれまでとは違う微妙な空気が流れた。
しばらく二人で見つめ合っていると、不意に後ろの扉からノックの音が聞こえてきた。
二人の視線が扉に集中する中、扉が開く。
「失礼します。A様、アーシャ様をお連れしました…お取込み中でしたか？」
『マレフィクス…いいえ、何でもないの。ありがとう。アーシャをこちらに』
マレフィクスからアーシャを受け取る。
抱き上げると、アーシャは目をパチクリとさせた。
マレフィクスは私より一つ年下の女の子。
もともと文官で、去年から政務官に。
実力だけでもぎ取った地位を羨む者も、妬む者もいるが本人は気にも留めていない。
国のため、国民のためにやれることがあるのなら、最善を尽くしたい。地位や名誉はお飾りで、そんなものに興味はない。
以前、彼女はそう言っていた。
周りの人は年上ばかりで頼れる人もいなくて、苦労も多いはずなのに、毎日ひたむきに努力し続けている彼女に私はジャーファルの影を重ねた。
ジャーファルも彼女のことを高く評価しており、彼女のことを妹の様に思っている。私も同様だ。
気さくで、笑顔の絶えない明るい少女。子供も大好きで、暇さえあれば遊びに来てくれる。
今もアーシャの世話をしてくれていたようだ。
ニコニコと嬉しそうに私とアーシャを見つめるマレフィクスに謎の少女の視線が釘付けになっている。
それに気づいた私は驚いた。
少女の瞳から感じ取ったのは、畏怖と憤怒…
まるで親の仇を目にしたような顔でマレフィクスを睨みつけているからだ。
『どうかした…？』
そう問うても、少女にはまるで聞こえていない。
マレフィクスしか見ていないようだ。
「あのぅ…私、何かしてしまいましたか？」
マレフィクスも少女の視線に気づいたらしく、恐る恐ると言った感じで訪ねている。
「……何でもない」
怒りと焦りの混じった声。先程の落ち着いた様子は一切感じられない。
バツの悪そうに視線を逸らした。そして傍にいたアーシャに目を向ける。
すると、今度は驚いたように目を丸めた。
マレフィクスに夢中でアーシャに気づいておらず、突然のアーシャの登場にびっくりしたというのもあるのだと思うが、もっと他のことに驚いているように見える。
少女はアーシャと私を交互に見つめ、私に動揺しきった顔でポツリと言い放った。
「姫様…」
姫様と二人の小さな物語(12)→←姫様と二人の小さな物語(10)
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 103人がお気に入り
お気に入り作者に追加
「アニメ」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
暁(プロフ) - 星月夜さん» ありがとうございます！更新遅くてすみませんm(_ _"m)ウィールスさんの出番も今後増えていくと思うので、今後もよろしくお願いいたします。 (2017年9月18日 0時) (
レス) id: 23374c4c5d (このIDを非表示/違反報告)
星月夜 - 更新がまた始まって嬉しいです。ウィールスさんのなかなか素直に慣れないところ大好きです(о´∀`о) (2017年9月17日 23時) (レス) id: b0ad28a90c (このIDを非表示/違反報告)
暁(プロフ) - くるみさん» すみません。完全に設定いれるタイミング逃してしまいました。(*- -)(*_ _)ペコリ (2017年9月17日 17時) (レス) id: 23374c4c5d (このIDを非表示/違反報告)
暁(プロフ) - くるみさん» ホントにね…苦笑 貴重なご意見ありがとうございます♪参考にさせてもらうね！ (2017年6月3日 6時) (レス) id: 23374c4c5d (このIDを非表示/違反報告)
くるみ(プロフ) - 暁、今まで二週間ぐらいバタバタしてたけどお疲れ様でした！やっと落ち着けるね（笑）私的には設定書いてもらえたらありがたいです！ (2017年6月2日 23時) (レス) id: 1b7b0b02d0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：暁 | 作者ホームページ：
作成日時：2017年4月24日 15時
