あなたがたった一度の恋でした５【水と炎で逆ハー】

其の弐佰参 炭治郎くん２７ ページ3

抱き締めた時に香った桜の匂い、禰豆子とは違う女の人の感触に、正直胸がドキドキした。

少々、邪(よこしま)な考えもあって助けたと言ってもいいのだろうかと悩む。

桜といると、緊張するような、穏やかな気持ちになるような、胸の鼓動が高鳴るような不思議な気持ちになれた。








「今日はこれくらいにして片付けようか」

「……そ、そうですね」



なぜか二人の間には微妙なギクシャクとした空気が流れていた。

そして、片付けた道具を持ってきた桜と炭治郎のぎこちない関係と距離にアオイたちが首を傾(かし)げて見ていた。

昨日までは仲良し姉弟か恋人のような距離だったのに、と。









それから数日後。

すっかり体力も元に戻った桜に炭治郎が敵わなくなった頃、その桜に退院許可が出た。

お世話になったしのぶたち一人一人にお礼を言って玄関に向かうと炭治郎たち三人が桜の見送りに来てくれていた。

あれから善逸と伊之助は炭治郎が全集中常中の呼吸を会得したことを知ると、急に参加を申し出て今日まで四人仲良く訓練をしていたのだ。



「お見送りありがとうございます。炭治郎くん、善逸くん、伊之助くん」

「いえ」

「桜さぁん！また遊びに来てくださいねぇ！」

「善逸！不謹慎だぞ！」



どさくさにまぎれ桜の手を取ろうとした善逸の首根っこを炭治郎が笑ってない笑顔で鷲掴む。



「お、俺は風にあたりに来ただけだ」



だったら庭に行けよと突っ込まれそうな理由を照れ隠しにかます伊之助。



「それでは、また」

「はい」



遠ざかっていく桜の姿が見えなくなるまで三人は見送った。

今度また会うときは任務で。

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