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Aが飲み始めてどれほど時が経ったのか。
いつの間にか酒を飲み始めたAの頬は紅く火照り、身体にこもる熱を逃がそうと着物は着崩れ、普段は晒されないその白く柔らかい肌が露になっていた。
太宰は熱に浮かされるAを一目し、ごくりと喉を鳴らした。
「……A。」
同室で先に眠った中原を起こさないよう静かに、しかし熱い声で名を呼ぶ。
声に反応し、ゆっくりとした動作で己の方へ向きを変えたAに太宰は男としての本能が騒ぐのを感じた。
艶やかな髪の先からすらりと長い足の爪先まで見尽くして、その汚れを知らないような白い肌に触れた。
「君は、私と心中してくれるかい。」
「心、中?」
「そう、心中。」
ここで酔った勢いとはいえ、はいと答えたならば誰が泣こうと、誰が怒ろうと太宰は無理矢理にでもAと心中するつもりだった。
「私は、太宰さんとは死ねないよ。一緒に死のうとしても、太宰さんを取り残しちゃう未来が見えるもん。」
「じゃぁ、君は私とは心中してくれないわけだ。」
「そうですね、でも……」
そこで一旦言葉を区切るとAは自分から太宰の膝の上に向かい合うように座ると妖艶な笑みを浮かべ、太宰の心臓に人差し指を当てた。
「もし、貴方の自 殺が成功したら、その時は……迷わず後を、追ってあげます。」
そういえばそのままAは太宰の上で寝落ちしてしまったようで、規則正しい息遣いが感じられる。
残された太宰は一人、Aの髪を梳くように絡ませ、口付けた。
「たのしみだなぁ。」
部屋に、その言葉を聞く者は誰もいなかった。
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零 - よろしくお願いします! (2019年5月23日 21時) (レス) id: 57759288c6 (このIDを非表示/違反報告)
山猫(プロフ) - 零さん» はい、大丈夫です。遅くなるかも知れませんが必ず書き上げます! (2019年5月22日 0時) (レス) id: 6c8434df42 (このIDを非表示/違反報告)
零 - 罰ゲームでメイド服着させられたのを読んでみたいです (2019年5月21日 20時) (レス) id: 57759288c6 (このIDを非表示/違反報告)
零 - リクエストよろいですか? (2019年5月21日 20時) (レス) id: 57759288c6 (このIDを非表示/違反報告)
山猫(プロフ) - ひよさん» 了解しました!少々お待ちください。 (2019年5月5日 12時) (レス) id: a93e3e53df (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:山猫 | 作成日時:2019年2月23日 21時