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liqueur:20 ページ44

静かに、深く、呼吸を繰り返す音が聞こえる。


「…ごめんなさい。みっともない姿を見せてしまって…」


ひどく鼻声ではあるものの、嗚咽が収まり落ち着いた彼女に何て言葉をかければいいのかわからない。


「気にしないでください」


グラスを揺らして色づいた透明の液体を見つめて、それくらいしか言えなかった。



なんとなくだが、彼女に抱いた違和感の正体がわかった気がするんだ。


口を開けばAさんの話ばかりだった萩原に、何度Aさんのどんな所が好きかを聞かされたことだろう。


『俺がベタベタしたら顔真っ赤にして照れ隠しで怒るの可愛すぎじゃない??』


『何でも一人で出来ちゃうような子だし本人もそう思ってるっぽいけど実は一人があんまり得意じゃないんだよね〜』


『苦いの好きじゃないから俺がコーヒー飲んだり煙草吸ったりした後にキスするとすっごいしかめっ面すんのすげー可愛いのよ』


『強がって何でも一人で解決させようとするところは直してほしいんだけど。でもそういう所、すげーなかっこいいなとも思うの〜〜』


『でも俺のことも頼ってほしい!!でもそんな所もまとめて好き〜〜〜!』


そんな萩原を全員げんなりした顔で見ていたな。



彼女は、強くないんだ。


再会した彼女は萩原の死を乗り越えたんだと思った。

乗り越えて、一人で地に足付けて生きてきた強い人だと勝手に思っていた。


勘違いだったんだ。


彼女はずっと一人で、萩原の死を受け入れられずにいる。

あいつが亡くなった日からずっと彼女は進めていないんだ。


「…意味、わからないですよね。忘れたくないはずなのに…忘れたい、忘れたくないって」


乾いた笑いとは裏腹に彼女は震える手でハンカチを強く握りしめていた。


「…降谷くんと再会して、たぶん、期待しちゃったんです」

「期待、ですか…?」


Aさんは再び泣かないように、堪えて、無理やり笑っているように見えた。


萩原が言っていた彼女の強がりな部分はこういうところなんだろうとふと思った。

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理那(プロフ) - ありがとうございました。本当に素敵なお話でした。 (2020年7月7日 16時) (レス) id: db0db57d74 (このIDを非表示/違反報告)
かものはし子(プロフ) - お萩さん» コメントありがとうございます(*^^*)頑張っていきます! (2019年5月17日 22時) (レス) id: e4c7a737a2 (このIDを非表示/違反報告)
お萩 - わー!とっても素敵ですね!ふるやさんこわーい「棒」 これからも頑張ってください (2019年5月17日 20時) (レス) id: c0a94bdd1a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:かものはし子 | 作成日時:2019年5月16日 3時

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