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liqueur:21 ページ45

時間が止まってくれたらと何度思ったことだろう。


忘れたくないのに止まってくれない時間が私の記憶を薄めていく。それが怖くて怖くて堪らなかった。


「降谷くんと…あわよくば研二の話ができたらいいなって、思ったんです」


いつまでも止まっていては駄目だと思って働き始めた。

没頭できるものができたおかげで少しずつ食事を取れるようになり、抜け殻みたいな空っぽの状態になることがなくなっていった。


そして、研二を思い出すことをやめた。


思い出して悲しくならないよう大切に、深く深く閉じ込めて仕舞い込んだ。


そうしたら辛くなることもなくなった。


もう大丈夫だよと笑顔を見せれば両親はホッとした表情で涙を浮かべていた。


それから一人暮らしを始めて、ようやくまた一人で生きていくことになった。


このままずっと研二のことは思い出さなくていい。思い出さなければ薄れていく喪失感を感じない。涙が込み上げてくることもない。


そうやって今日まで生きてきた。


「…今は、違うんですか?」


降谷くんの言葉にゆっくりと首を振る。


「…私の知らない研二の話を聞いたり、懐かしいねって昔の話を笑ってできたらいいなって、思います」


そうやってまた、思い出が徐々に色を取り戻すかもしれないと期待する。


「それじゃあ…」


「でも……私が今こうして普通に生活できるのは、研二のことを思い出さないようにしてきたからなんです…。

だから今まで通り思い出さないままの方がいいのかもしれないとも思います…。また、矛盾したことを言ってますね」


ぐちゃぐちゃで、先と同じく全く反対の気持ちを言葉にして自分でも意味がわからず失笑してしまう。


思い出さなくても研二は確かに私の中にいる。だからあの日から時間を経て、私は今こうして生きてるんじゃないか。


一緒に住んでたあの部屋に。

あの頃の姿のまま。

私の想いと一緒に。

大切に。消えないように。忘れないように。

私の記憶の奥深くに。大切に。大切に。


「Aさん」


凛とした声で名前を呼ばれ、ゆっくりと降谷くんに視線を向ける。


少しだけ眉根を寄せた彼は


「今から俺が話すことは、あなたの考えを否定するわけではありません。ただ俺があなたの話を聞いて思ったことを、聞いてくれますか?」


優しく、それでいて胸を打たれるほど真っ直ぐな眼差しでそう言った。

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理那(プロフ) - ありがとうございました。本当に素敵なお話でした。 (2020年7月7日 16時) (レス) id: db0db57d74 (このIDを非表示/違反報告)
かものはし子(プロフ) - お萩さん» コメントありがとうございます(*^^*)頑張っていきます! (2019年5月17日 22時) (レス) id: e4c7a737a2 (このIDを非表示/違反報告)
お萩 - わー!とっても素敵ですね!ふるやさんこわーい「棒」 これからも頑張ってください (2019年5月17日 20時) (レス) id: c0a94bdd1a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:かものはし子 | 作成日時:2019年5月16日 3時

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