第58話 お休みの日 ページ9
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そんなことがあった翌日。
武田先生からお達しがあった通り、部活はお休みだ。
影山くんは、青葉城西の及川さんに会いに行くらしい。
行く前、“お前も来い”みたいな目で真っ直ぐに見られたけど、さすがにそれは邪魔になるからってことで、丁重にお断りした。
影山くんが、“あの”及川さんのところに自ら行くなんて、それ相応の覚悟がいる、とても重要なチャレンジでしょ?
だから、私はマネージャーで、それと関係なくは無いけど、今回はなんかちょっと毛色が違うかなぁとか思って。
心細いだろうけど、頑張ってね。影山くん。
ということで、一人になった私は、少しお洒落をして、本屋さんに行ってみた。
何せ滅多にないフリーな放課後だからね。
大切に消費しないと。
書店特有の暖かい静寂の中、ずっと買わなきゃなぁと思ってたマンガの続きに胸をときめかせたり、すんごい高価ですんごい分厚い図鑑を眺めたりした。
誰が買うの……っていう素朴な疑問はちゃんと飲み込んだ。
本屋さんでそれを言うのは野暮だもんね。
そのあと、行きたかったパン屋さんで、ふかふかの食パンと今日のおやつにする甘いパンをいくつか買って、るんるんしながら帰宅した。
お母さんはコーヒー、私は紅茶をそれぞれ淹れて、幸せたっぷりな優しい甘さを噛み締めた。
そしてこれが至福か……と、にんまりしてるとき、テーブルの上に置いていたスマホが小さく振動した。
「電話?」
お母さんが訝しげな表情でスマホを手渡す。
「うん、たぶん…?」
『ありがと』と返事をして画面を見た。
表示されている“鵜飼コーチ”の文字。一瞬、意味がわからなくてフリーズした。
手の中でスマホがぶるぶる震える。
「A、出なくていいの?」
「あっ、うん。出る出る」
画面をタップした途端、電話の向こうから、やたら焦った様子の鵜飼コーチの声が聞こえた。
「Aか?今どこだ?」
「今、お家です。お母さんとおやつ食べてる」
「お、おやつかぁ、いいな。……じゃなくて、今から来れるか?」
「大丈夫…ですけど?何で?」
「ちょっと話したいことがあってな。じゃあ、待ってるから」
最後、今思いついたかのように、行き先だけ早口で言って、鵜飼コーチは慌ただしく電話を切った。
「よくわかんないけど、行ってくる」
「そう。マネージャーも大変なのねぇ」
のんびり呟くお母さんを横目に、スマホだけ持って先を急いだ。
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pomme(プロフ) - riさん» ありがとうございます〜!!🫶🏻 (2022年5月21日 16時) (レス) id: 13950c2c2a (このIDを非表示/違反報告)
ri(プロフ) - 最高でした〜〜🥲💗💗💗 (2022年5月21日 10時) (レス) @page50 id: d86ac26d68 (このIDを非表示/違反報告)
pomme(プロフ) - 黒猫。さん» いつもありがとうございます!!!黒猫さんの熱超ヤバいし、嬉しすぎるし、ありがたいしで狂っちゃう!もうほんと、マジありがとうございます🫶🏻🫶🏻頑張ります〜! (2022年5月6日 20時) (レス) id: 13950c2c2a (このIDを非表示/違反報告)
黒猫。(プロフ) - うわああああ!!…わあ。語彙力吹っ飛びました!!もう!好き!コメ欄が黒猫ばっかになってすみません本当に!愛が溢れてまう…!!とりあえず主様を神と崇めさせていただいてよろしいでしょうか!!かっ…げやまぁ!!完結まで応援しますわ…影山との恋の行方を見届けます! (2022年5月5日 20時) (レス) @page42 id: abf8c53ec1 (このIDを非表示/違反報告)
pomme(プロフ) - 黒猫。さん» ありがとうございます!!!嬉しすぎて、もう泣いちゃう!!素敵なありがたすぎるお言葉、何度も読み返してニンマリしてます……🫶🏻いい夢見れそう… (2022年4月11日 23時) (レス) id: 13950c2c2a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:pomme | 作成日時:2022年1月20日 23時