33話 ページ35
僕が次に目を覚ましたときは、まだ汽車の中だった。
窓を見ると、外は真っ暗、街灯もなく、辺りの町は闇とかしていた。
前の座席に座っていたアレン君は、少し眠っていた。そして、膝のうえには白狼がスヤスヤと眠っている。
この二人、もうそんなに仲良くなったのか…。
僕は少し嬉しくなって、笑みがこぼれた。白狼が懐くなんて、リナリー以来のことだ。
僕はユウに寄り添っていた体を起こし、彼の顔を見た。ユウも眠っているのか、目をつぶっていた。
ユウの綺麗な顔をマジマジと見ていたら、さっきのことを思い出した。
思わず、体が熱くなる。なんでユウはあんなことしたんだろう。
病院でしてきたキスは、あれが初めてではない。初めてのときは、確か、ラビが入団した頃だ。
僕がラビとヘラヘラヘラヘラしていたら、突然ユウが僕の手をとって部屋に連行されたんだ。
そして、そのままキス。
あのときユウは「俺の気持ち、伝わってねェのか…」と、言っていた。
僕はその時、訳がわからなくて、泣きながらユウの頬を叩いてしまったんだ。なんでこんなことするのか、整理がついていなかった。
…でも、今冷静になって考えると、あれは、ラビに嫉妬して……………。
ランマ「いや、断じてない！」
思い切り口に出した。皆は寝ているために、何も聞いてないし、見てない。
このユウが、僕のことなんかを、す、す、好き、とか思うはずないし。
まず、一度も「好き」って言われてないし…。
ランマ「………な、ないですよね〜…」
乾いた笑いが「ハハ…」とでた。
この戦争に勝つことしか考えていないユウが、僕を好きなんてありえない。
初めてのキスも、また今日されたのも、きっと挨拶みたいな、そんなのなんでしょ。
僕は寝ているユウの頬に手を添える。
ランマ「僕は、君のこと、大好きなのにな…」
届くはずがない、この大きな気持ちを、グッと胸の奥そこに閉じ込めよう。
大切に思えば思うだけ、別れが辛くなる。
それはいつしか、アレン君に言った自分の言葉と重なる。『偏りすぎてはいけない』と。
自我を見失うな、そう言い聞かせ、僕はまた汽車の外の景色を眺めはじめた。
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作者名：欄ま | 作成日時：2016年8月24日 3時
