29話 ページ31
僕はアレン君の気持ちを尊重し、マテールの地にイノセンスを残し、近くの病院まで二人を運んだ。
レベル2のアクマはもういない。マテールの地は、誰もいなくなった。グゾルとララを除いて。
アレン君は目を覚ますやいなや、「もしかしたら、まだ少しアクマがいるかもしれません」と、ララたちを心配して、一人マテールの地に行った。
そして僕は、まだ起きないユウの隣で、目覚めるのを待っていた。
この町はとても美しい。ユウを背にして、窓を除くと、エメラルドグリーンの海が広がっている。
ランマ「こういうところで、リナリーと遊びたいなあ…」
エクソシストだって、たまには普通の人らしい遊びがしたい、本音がポロっと出た。
頭の上にいた白狼が反応し、「クゥ?」と、声をかけてきた。
その様子は、とても眠そうだ。まる一日僕のために走ってくれたから、無理もない。
ランマ「まだ寝てて大丈夫だよ」
窓際に僕のキャスケット帽を逆さにしておき、丸まって眠そうな白狼を、そっと寝かした。
今回の任務は、僕の力がまだまだということを実感した。
新人のアレン君のような精神力が欲しい、泣かない強さが欲しい。
ランマ「頑張らなきゃなぁ…」
神田「おまえは、十分強いと思う」
寝ていたはずのユウの声がした。僕は「ユウが起きた!」と思い、後ろを振り返った。
ランマ「…ふぇ…?」
後ろを振り返るまでは良かった。しかし、目の前はユウの首元。
ユウがどうなっているのか、理解するまでに時間がかかった。
僕はユウに抱きしめられていたのだ、片手は頭に、もう片手は腰辺りをガッチリとホールドされてしまっていた。
ランマ「ユ、ユウ…???????」
ユウは僕を抱きしめたまま動こうとしない。なんだか恥ずかしくなってきた。顔を見ることができない。
ランマ「あ、あのっユウ…」
神田「…っるせぇ、もう少しだけ、こうさせてろ…」
こ、こうさせてろ…?!
あのユウが、僕にお願い…?!?!
もう恥ずかしさと驚きで、僕は耐えられない。すでに、顔が真っ赤になっているだろう。
神田「…また泣かした。悪い…」
ランマ「え…」
どうやらユウは、僕が任務中に泣いたことが気になっていたみたい。
ランマ「ち、違うよ。あの時も言ったでしょ、目から色々出てきただけでーーーー」
その瞬間、今度はユウが、ズイッと僕の顔を覗いてきた。
まともに目線があって、うまく表情が作れない。顔が赤くなってないか、心配で心配でしょうがなかった。
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作者名:欄ま | 作成日時:2016年8月24日 3時