第254話 そして、暗黒の底へ… ページ13
闇の中に囚われたルカの周りを、無数の黒ルフが飛び交っていた。黒髪の少女はそれらがざわめく不快な音に最初は耳を塞いでいたが、それに混じって誰かの声が聞こえてきた事に気づいた。
『兄さんを殺したのが練紅炎達でなくても、あいつらを恨む理由は十分にあるんじゃないか…？』
「…！ これは……」
その低く落ち着いた凜々しい声は、紛れもなくルカ自身の声であった。
『アル・サーメンが裏で糸を引いていたとはいえ、あいつらは表でそれに乗っかって甘い汁を吸い続けていたんだ』
ルカはすぐさまもう一人の自分の声に反論した。
「違う！！ 止める事が出来ないから耐えていたと、紅炎達も言っていたではないか！！」
『ふっ。だがその真実を知った今でも、貴様の心には穴が空いている。兄さんを失った悲しみは、まだ癒えていないのだろう？』
「っ…」
『誰が殺したかなんて細かい事はどうでもいい。兄さんは、もう戻ってこないんだ』
「やめろっ…やめろやめろやめろ！！！！」
少女は頭を掻きむしりながらそう叫び、地面にくずおれた。
呼吸は荒く、全身がガタガタと震えている。
『苦しいだろう？ 煌帝国という恨みの対象を失って、何かを恨もうにも恨めない。貴様の心に残ったのは愛する者を失った悲しみだけ。だがそれでは心が壊れて立ち直れなくなってしまう。
……楽になる方法を教えてやろうか？』
ルカは不思議そうに顔を上げた。
「…？」
もう一人のルカの声が、せせら笑うように言う。
『簡単だよ。“運命”を恨めばいい』
「運命を……？」
すると、ルカの周りを囲むルフが一気に増殖し、ザワザワと音を立てながら彼女の体を覆い尽くした。少女の瞳がゆっくりと、黒く濁っていく。
(―そうか。私と兄さんが貴族に売られて酷い思いをしたのも、流れ着いた村で仲間に巡り会えた事も、煌帝国への反乱軍を結成して立ち向かった事も、あの戦争でたくさんの大切な人を失った事も……全部仕組まれていた事なんだ。
そんなことの一つ一つに私は一喜一憂して、弄ばれて…ああ、運命とはなんて憎いのだろう。
いや、私だけではない。いつ生まれて、いつ死ぬか、全ての人間は最初から決められたレールに沿って歩かされているんだ。
ならば、私は…私は……
運命を恨んでやる！！！！)
ルカが立ち上がり目を見開いた瞬間、彼女の中の白ルフは一斉に真っ黒に染め上げられた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 12人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ちぇりい(プロフ) - ネコ２世さん» ありがとうございます！！！マギも完結しましたし、まだこの小説を読んでくださっている方がいることに驚き、とても嬉しいです！ 頑張って完結させますね！！ (2022年1月27日 23時) (
レス) id: 3c2f248552 (このIDを非表示/違反報告)
ちぇりい(プロフ) - みっちゃんさん» まだですが、頑張ります！！ (2022年1月27日 23時) (レス) id: 3c2f248552 (このIDを非表示/違反報告)
ネコ２世(プロフ) - この作品を読んでいてファンになりました！美少女達の恋の行方や世界を救えるのかなど続きが気になります！ (2022年1月24日 5時) (レス) @page40 id: 70e333ef08 (このIDを非表示/違反報告)
みっちゃん - これって物語完結したんでしょうか？ (2021年4月28日 23時) (レス) id: 9e3370e2e5 (このIDを非表示/違反報告)
ちぇりい(プロフ) - (＊∀＊)ノさん» コメントすごく嬉しいです！！ありがとうございます！！ 大好きになっていただけてかなり嬉しいです！ 今後もマリアの活躍を楽しみにしていてください。 (2019年4月15日 0時) (レス) id: 3c2f248552 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ちぇりい | 作成日時：2018年3月30日 16時
