PARACAGE 2nd【ars】 (ページ34)

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69.キミの恋。ページ34

同じ会社で、同じ休みなのに、デートは平日の仕事終わりだけ...。
週末は会わない...。
でも、彼女で好きな人...。

ちょっと待って、物凄く嫌な予感が浮かんだんだけど、これはそうなの？どうなの？

「A、一人で百面相しないでくんない？」
「えぇっ！？」
「ヤバイ？って顔してみたり、急にワクワクしたと思ったらまたヤバイ？って顔になってるし」
「そんな事は...」

あるな。ある、自覚ある。

「何考えてる？A」
「...えっと...」
「多分、それ正解だよ」

何も言えなかった。
だって、私が考えてたのは...人に言えない恋だ。
隠さなきゃならない関係。

「どっかで『奥さん』って呼ばれてんじゃない？オレのカノジョ」
「.....」
「もちろん、オレの奥さんじゃないけど」

剥いた栗の皮を集めて袋に入れながら、ニノくんが話す。

「オレ、セカンドなの」
「.....」
「立場としては『アイジン』」
「愛人...」
「そ」

全然、悲愴感のカケラも見せない。
彼は皮の入った袋の口をキュッと結んで、自分の口角もキュッと上げる。

「何でAはそんな悲しい顔してんの？」
「だって...」

その恋はきっと、悲しいはずだ。
辛いはずだし、寂しいはずだ。

そう思ったら、もう笑えない。
こんな話をさせてしまった自分に、嫌気すらする。

「ニノくん、ごめんなさい...私...」
「ンフフ、何で謝んの」

フゥ、とニノくんは小さく息を吐いて

「A」

彼の手が、ポンと頭に乗った。

「お前は優しいね」

ポンポンと、頭を撫でられる。

「でもダイジョブよ？オレ、気に入ってるから」
「...え？何を？」
「自分がアイジンでセカンドって事」

頭の上の手は、まだポンポンと跳ねてる。

「だって、束縛されないの。カノジョは居るのに自由」
「...けど、寂しくない...？」
「会社行けば会えるもん。部署も同じだし」
「え、あの...周りには...」
「バレてない、ってゆーか言える訳無いよね」

ポンポン跳ねてた手はパコと頭を軽く叩いて、スルッと離れた。

「ニノくんは、その人の1番になりたくないの...？」
「んー難しいね。カノジョ、オレの前では『カズが一番好き』って言うからねぇ...」

ニノくんが頬杖をついて、ちょっと首を傾げ

「信じてないけど」

ちょっと怖くなる位の、綺麗な笑顔を浮かべる。

「オレはね、セカンドで良いの。気楽なの」
「.....」
「あ、でもAは1番目指しなよ？女の子は愛されなきゃ」

綺麗な笑顔のまんま、彼が言った。