PARACAGE 2nd【ars】 (ページ35)

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70.帰って来て。ページ35

「A、明日仕事？」
「あ、そうだ。仕事です、もう寝なきゃ...」
「可哀想。オレは休みー」

からかうように言ってきたニノくんに、手元に残ってた栗の皮をポイッと投げつけた。

二人で2階に上がって、ニノくんが黄色のドアに手を掛けながらチラッと振り返る。

「相葉さん、結局外泊かな」

鶯色のドアを見ながら「雅紀くん、外泊常習？」ってニノくんに訊いてみたら「常習」って短く返ってきた。

「じゃ、おやすみ」
「あっ、ニノくん」
「ん？」
「さっきの事、皆は...」

あぁ！って顔。

「知ってる。オレにとっては普通の事だから、別にアイツらには隠してないよ」
「そっか…」
「だから何も心配せずに寝なさいな」

自分の部屋に戻って、ベッドに潜り込む。

そっか...そうだよね。
知ってるから智くんがニノくんには『好きな人いる』って言ったんだろうし、潤くんも『デートは無い』って言い切ったんだ。

「.....」

朗らかなニノくんが、時々消えそうに儚く見えてたのはこの恋愛が関係あるのかな...。
でも本人は気に入ってるって言ってたし、それが嘘にも思えなかった。

「...色々あるね...」

ホント、人が100人いたら100通りの考え方がある。

ふと、壁を見る。
あの向こうに、今日は雅紀くんが居ない。

外泊常習...まぁ、お仕事も忙しいだろうし…。
そうだよ。お仕事、お仕事！

自分に言い聞かせて、その日は目を閉じた。

翌朝、雅紀くんが帰って来た様子は無かった。
日曜だから智くんだけじゃなくてニノくんも潤くんも家に居て、桜香寺の翔さんに挨拶して出勤。

仕事を終えて帰って来ても、雅紀くんは居なくて。
潤くんが用意してくれた豚カツも、5人分。

「あ、今日も雅紀帰って来ないんだ」
「どっちだろ、飯はいらないって連絡は来た」

翔さんと潤くんの会話を聞きながら、豚カツを口に運ぶ。
今日は帰って来て欲しいな...と思いながら、お味噌汁を飲む。
でもやっぱり彼は、私が寝る時間まで帰って来なかった。

だけど夜中に隣の部屋から小さな物音が聴こえて、帰って来たんだなぁ...って微睡みの中で安心したような気がする。

・

朝、起きた私はいつものように部屋のドアを開けた。
だけどいつもとは違う雰囲気を感じて、立ち止まる。

廊下の向こうから、男物のシャツ1枚だけ身に着けた女性が歩いて来る。

誰？と思う間も無く、彼女は私に微笑み会釈して

そのまま、鶯色のドアの中へ入って行った。