□ご飯 ページ25
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もう一つハンバーグを皿に乗せて十四松くんに渡してあげる。
「おそ松さん」
「ん?」
「…前に言ってたじゃないですか。何が楽しくて働いてるのかって」
私の突然の発言に、面食らったように箸を止めるおそ松さん。こくりと頷いたおそ松さんに「私、考えたんですけど」と頬杖をついて続ける。
「言われてみれば、そんなこと考えてみたこともなくて。やりがいも感じることなくずーっと淡々と同じ作業ばっかりだから…」
「公務員だしなぁ…」
「でも私、美味しいご飯を食べるために働いてるのかなーって思いました、今日」
「くだらないけど…」と照れくさくて思わず笑うと、おそ松さんは私を見てニッと笑った。
チョロ松さんもカラ松さんもトド松くんも親のような目で私を見ている。
「ま、働かなくても飯はうめーけど」
「おそ松兄さん黙ってなよ」
「働いた後の方がご飯もお酒も美味しいですよ?働いたことのない人には分からないと思いますけど」
「ちょ、怒んなってA」
おそ松さんを冷たい目で見つめる私に苦笑いで謝るおそ松さん。私は「別に怒ってませんけど…」と笑った。
「それで、私の作った料理で他の人も幸せになったらすごくいいなって。カラ松さんに美味しく食べてもらえてすごく嬉しかったから」
私の話を聞きながら黙々とハンバーグを食べていたカラ松さんの方を見て、頭をかきながら笑えば「……お、おかわりとってくる」と台所の方に歩いて行ってしまった。
「働くことって、悪いことばっかりじゃないですよ」
「…なに、おそ松更生作戦でも立ててんのA…」
「いや、ほんとに働かないとやばいよおそ松兄さん」
真面目なトーンで言うチョロ松さんと、鬼気迫る感じの他の兄弟たちにも「頑張ってください」と笑った。
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食後の運動と題してプロレスの始まった居間で、私はいそいそとみんなのお皿を片付け始める。
「あー!Aさんいいです!僕やります!」
「あ、じゃあ…明日早いのでお言葉に甘えて…ありがとうございます、チョロ松さん」
「いえ、とんでもない」
チョロ松さんに申し訳なく頭を下げたらキランとキメ顔で機嫌よく台所の方に入っていった。
「それじゃお邪魔しました」とコートを羽織りながら、みんなのお見送りで居間を出ると、がしっと手首を掴まれた。
「送る」
カラ松さんは「夜中にレディーを一人で帰らせるわけには行かないからな」とふっと笑った。
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