□働く理由 ページ20
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「あー!カラ松さんここです!!」
カラ松さんがものすごい速さで自転車をこいでくれたおかげで、ギリギリセーフだ。
腕時計を見れば9時の五分前。
区役所の前で止まった自転車からパッと降りて、「ありがとうございます!ありがとうございます!」と全力で頭をさげる。
「早く行かないと………遅刻するぜ」
「あぁぁ…すいません!この埋め合わせはいつか!!」
もう一度カラ松さんに頭をさげると、全速力で区役所の自動ドアをくぐった。
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「新人が社長出勤なんていいご身分ザンス」
「いや、あの、井矢見さん、これには事情が…」
「言い訳はいらないザンス!」
「申し訳ありません!!」
ギリギリセーフだったけど、結局井矢見さんのお説教は免れなかった。
「本当に世話のかかる新人ザンスね…」とため息をつきながらも私が事務処理をしているのをちゃんと見ながら注意してくれる。
__じゃあ逆に聞くけど、Aは仕事楽しいか?
ふとこの間のおそ松さんの言葉が蘇る。
ちらりと井矢見さんの方を見れば、「あ?」とガンを効かせて睨まれた。
「…なにジロジロ見てるザンス。………さーてーは、この偉大なるイヤミ様に惚れたザンスね!」
「…違います」
「そんな苦い顔しないで欲しいザンスね」
「あの、井矢見さん」
「なんザンショ」
この人いつも楽しそうに働いてるし、妥当な答えが返ってくるかもしれない。
私は思わずペンを置いて井矢見さんに向かって坐り直す。
「井矢見さんはなにが楽しくて働いてるんですか?」
「………仕事を辞めたいならはっきり言うザンス」
「違います違います!!」
辞意だと捉えられたらしく、呆れる井矢見さんを必死に止めると、かくかくしかじかでとこの前のことを話せば「はーん」と興味のない顔で頷きながらも聞いてくれた。
「おそ松の野郎に変なこと吹き込まれたんザンスね」
「知ってるんですか?おそ松さん」
「あの社会のゴミには散々迷惑かけ、かけられの関係ザンスからね」
「へぇ…」
「ミーは、お金が好きだから働いてるザンス。仕事が楽しいわけではないザンス」
「…なるほど」
わりと納得のいく答えが返ってきて、私は思わずうーんと考え込む。じゃあ私は何の目的で働いてるんだろう。
別にお金が好きなわけではない。質素でも細々暮らしていけたらそれでいい。
「…うーん」
「いいからさっさと働け社畜」
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