□お邪魔虫 ページ48
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「無理」
「え」
即答されて、困って「じゃあこのままでいいや…」と渋々引き下がると、ドキドキと動き回る心臓をおさえながら「あの、お兄さんたちのことだけど」と切り出した。
「一松くんは、この台風の中猫を見放すのが危険だから一緒に居たんだよね」
「別に」
「お兄さんたちも、トド松くんも十四松くんも、20数年間六つ子してるから、きっとそこはわかってると思う」
「………」
私は一松くんの方に向いたままぼそぼそと続ける。
「一松くんは実は優しいって、会って間もない私も知ってるし」
「……は?」
私の言葉に思わずこちらを向いた一松くん。
目線が交わって、私が「やっとこっち向いてくれた」と笑えば暗闇の中で眉間にしわを寄せて顔を赤くしてる一松くんが見えた。
「一松くんが帰りたくないなら、好きなだけうちにいていいよ」
「………」
私の言葉に一松くんは、うっと口を噤むと目をそらす。
一松くんは仰向けになって大きくため息をついて、顔を押さえると、
「…迷惑だ、早く帰れって思ってんだろ」
「思ってないよ。一緒にご飯食べれて楽しかったし」
「………俺なんかと話してても楽しくないだろ」
「楽しいよ」
「……………」
顔をおさえていた手を少し離して、即答する私をちらりと見つめると、さっきとは逆で今度は一松くんが私の上に跨った。
「え」
「ねぇ」
絶句する私に一松くんは倒れこむようにのしかかってきて、耳元に顔を寄せる。
カチーンと固まって内側から熱くなる私。
「……誘ってんの」
「さっきから思わせぶりなことばっか言って」といつもの低い声で耳元でつぶやかれて、ぞわぞわっとなんとも言えない感覚が背中を走る。
「ち、違う…」と言いかける私を遮るように続ける。
「一人暮らしの部屋に男招待するとかさ、何されても文句言えないよ、アンタ」
「い、一松くんさっき、何もしないって…」
「…しないつもりだったけど、普通にムラムラしてきた」
「はいぃっ!?」
一松くんは虚ろな目で私を見下ろすと、ぐいっと顎を掴む。
覚悟を決めてぐっと目を瞑ると、私の顔にふわふわの何かがずしっと乗っかった。
「ぶっ!」
「…邪魔すんなよ」
一松くんは溜息つきながらそのふわふわを抱き上げて、その正体、猫の首を撫でる。
「やっぱいい。…寝る」
一松くんは猫を私と一松くんの間に寝かせて、またふいっと背中を向けると黙り込んでしまった。
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