■何コレ ページ30
おそ松
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Aが隣で突っ伏してぼそぼそと話し始める。
女の子と飲んでるはずなのに、なんだろうこのちっともドキドキしない状況は。
「おそ松さん…ニート楽しいですか?」
「え?」
「………」
「楽しいっつーか…気が楽?高望みせずにぼんやり生きてければいいかなーって」
「………私もニートになりたい」
突っ伏したままのAが泣きそうな声で言う。
うちのトド松と十四松がAの職場にパートとして入ってからというもの、仕事が倍増したらしいAは、文字通り死に物狂いで仕事してたんだけど、
怒られ、残業し、トド松と十四松のミスのカバーすらできない自分を殴りたいらしい。
「…私があの職場にいても、なんの役にも立たないんです」
「………」
「………迷惑かけるぐらいならいっそ辞めたい」
この前あんなに嬉しそうに、「私は美味しいご飯を食べるために働いてる」と言っていたAが、死にそうに挫けそうになっている。
「A」
俺はちびっとビールを飲んで、そーっとAの頭に手を乗せる。
弟たちにはるか昔にやってたように、ぽんぽんと頭を撫でてやれば、
ふりはらわれるかと思ったけど、Aは何にも言わず受け入れている。
「お前は頑張りすぎなんだって。気張りすぎ」
「………」
「もっとラクーにテキトーに生きてみなよ」
「……」
俺の言葉にAは小さく顔を上げると、泣きそうな顔で俺を見つめる。
「おそ松さんと話してると、安心しますね」
Aは俺を見て小さく笑うと、ちょっと顔を上げて俺をじーっと見つめる。
火照った顔と潤んだ目と上目遣いに思わずAの頭に置いていた手をパッとどかすと、顔をそらしてぐびぐびっとビールを飲み干した。
Aは気が抜けたのか楽しそうに笑いながら俺のパーカーの袖を握る。
(ちょっと待って、なにこれ)
顔をそっぽ向けたまま、片手で頭をかく。
確実にお酒のせいじゃない。
顔が熱いし身体も熱いし、なにより心拍数が異常だ。
(さっきまでAが愚痴って俺がテキトーに励まして、おごってもらって的な色気もクソもない展開だったじゃん!!)
目の前でチビ太がニタニタしている。
「ちょ、チビ太!これツケな!」
俺は急いで立ち上がると、余裕で寝ているAを背負っておでん屋を出た。
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