■トラブル ページ28
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「十四松くーん…この資料大至急直して……」
「あー!うん!今度行くー!あはははは!」
「…」
例の資料を片手に十四松くんの席に向かえば、デスクについている電話で楽しそうに誰かと話している十四松くん。
絶句して止まるしかない私。
「え?八百屋やってんの?いーね!」
「…」
誰と話しているんだこの人は。
私は十四松くんから受話器を奪い取ると「申し訳ありませんが業務中ですので」と通話を切った。
「Aちゃん!」
「…十四松くん?誰と話してたの?」
「…誰なんだ、あれ」
「え!?知らない人!?」
「いやーなんか意気投合しちゃってさー」
知らない人とそこまでいきなり仲良く話すってどうなんだ。
私は怒る気も失せて「これ…」と例の資料をへらへら笑う十四松くんに渡す。
「ゼロ多いって」
「え!?まじで!?オッケー!明日までに直す!」
「出来れば今日でお願いします!」
十四松くんに食い気味に言うとふぅっと息を吐く。真面目にパソコンに向かい始めた十四松くんに安心して隣のトド松くんのデスクを見ると、お菓子の袋が残っているだけで彼はどこにもいない。
「…トド松くんは?」
「あー、あっちでオネーさんと話してる!」
「オネーさん?」
十四松くんの指差した方を見れば、カウンターにやってきたお姉さんと楽しそうに話してるトド松くん。
「連絡先教えてよー」と可愛い笑顔で言うトド松くんの声が聞こえて、思わず彼の元へダッシュするとトド松くんをどかす。
「どのようなご用件ですか?」
「あ、住民票を移したいんですけど」
「はい!少々お待ちください」
「ちょ、Aちゃん邪魔しないでよー。今オネーさんから連絡先を…」
「職場でナンパは禁止!!!」
「あとお菓子も食べちゃダメ!」と言いながら住民票の資料を出していると、トド松くんが嬉しそうに「Aちゃん、怒ってても可愛いね」と笑顔で言う。
「…」
「スーツ姿もすっごく似合ってて素敵だし…」
「……ご、ごまかされないからね!!トド松くん!」
滅多に向けられない褒め言葉を浴びせられて思わず胸がウズウズするけど、必死に振り払ってトド松くんをキッと睨む。
「そういうのみんなに言ってるんでしょ!」
「えー、Aちゃんだけだよ」
「トド松くんはいいからデスク戻って!」
「いや待って!あのオネーさんと結局連絡先…待ってAちゃん!」
必死に私を止めるトド松くんをスルーして仕事に戻る。
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