九輪 ページ10
一週間後
今日はあいにくの曇天
厚い雲が空一杯に広がっている
「真奈。もう授業終わったよ」
琴音が私の顔を覗き込むようにして言う
その手にはかわいらしいこじんまりとしたお弁当
「あ、もう昼休み?」
「そうだよ。考え事でもしてたの?
授業中も上の空だったけど」
琴音はお弁当を広げながら問いかける
「いや、考え事っていうか。
なんかぼーっとしてた」
「珍しいじゃん。真奈が上の空なんて。
優等生なのに」
奈津美が茶化して言う
「別にそれとこれとは関係ないでしょ」
卵焼きをつつきながら非難する
「でもさ、真奈が誠凛にいるなんてねー」
奈津美が私のことをじっと見ながら言う
「またその話?」
入学してからもう何回言われたか分からない
言葉に耳を傾ける
「だって真奈、成績良かったじゃん。
推薦だってもらえたでしょ?
確か……秀徳の」
「……別に行きたくなかったから。
それに誠凛のほうが家から近いし。
それに校舎だってきれいでしょ」
そう言っておかずを口に運ぶ
正直この話題はうんざりだ
「そうだけどさ」
歯切れが悪い奈津美を見ながらため息をつく
「何よ、私が誠凛にいちゃ嫌なの?」
軽く睨みながら言うと奈津美は大きく
首を振った
「まさか。そんなわけないでしょ」
「じゃあなんで?」
問い詰めるように聞くと奈津美は
気まずそうに俯いた
「あのね真奈」
ずっと黙っていた琴音が口を開く
「何?」
「なっちゃんは真奈と同じ学校が
嫌とか、そんなんじゃないの。
ただ純粋にどうしてかなって思ってるだけ。
真奈、受験の時私たちに何にも
言わなかったでしょ?
私たちはてっきり推薦で秀徳行くと
思ってたから。
一般で受けたことも、誠凛に来ることも
全く知らなかったからさ」
ペットボトルのお茶を飲みほして、
琴音は続ける
「なっちゃんは寂しかっただけなんだよ。
何にも相談せずに真奈が決めちゃったから」
淡々と言う琴音の隣で恥ずかしそうに
もじもじとしている奈津美
「ふふっ…」
不意に笑いがこみあげてくる
怪訝そうにしている二人にそっと
笑いかける
「信用してなかったわけじゃないの。
ただあの時期は一人で考えたかった。
それだけのことだから」
そう言うと二人はほっとしたように微笑んだ
30人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ルナ | 作成日時:2014年6月28日 16時