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三十輪 ページ31

私の告白から数カ月


私と緑間が”恋人”という関係であることは公にはならなかった


あまり恋人ぽくないからだろうか


それにお互い部活やら習い事やらでそこまで始終一緒にいるわけではない


小さな喧嘩は何度もあったが、それなり続いている


季節はもう秋


木枯らしが吹いて、紅葉が綺麗に色づく季節


最近緑間の様子がおかしい


浮気を疑うとかそんな俗的なものではなくて


なんかバスケに対するものの見方が変わったような気がする


私はバスケの知識があるわけではない


新チームの副キャプテンになったから、色々と大変なのだろうと思ってた


でもそれだけではない気がするのだ


それに考え込んだり難しそうな顔をしていることが増えた


時折、あの綺麗な翡翠色の瞳が濁って見える時だってある


私の考えすぎならいいのだけども


「ね、緑間」


久々に一緒に帰る放課後


今日はバスケ部は珍しく休みなのだ


隣を歩く彼に声をかける


その右手には小さな鉢植えが


おそらくおは朝のラッキーアイテムだろうけど


「何なのだよ」


「最近どう?」


「どうとは?第一、毎日顔を合わせている。なぜそんなことを聞くのだよ?」


怪訝そうに眉を顰めながら緑間は問い返してきた


「んー…。確かにそうだけど。最近の緑間はちょっと様子がおかしいっていうか…」


尻すぼみになっていく言葉


「おかしい…?」


「…うん。よく考え事をしてるから。いっつも眉間に皺が寄ってる」


そう言うと緑間はあっけにとられたような顔をして、左手で眉間をマッサージした


その光景が面白い


必至で笑いを堪えていると彼は大真面目な顔で答えた


「別に、川田が心配することはないのだよ。確かに新チームになって変わったことはあるが…。
 まぁ大丈夫だろう」


ウソだ


直観的にそう思った


緑間は大丈夫なんて微塵も思っていない


でもきっと深く追求することはしてほしくないのだろう


「そう。なら良いんだけど。あ、今日もお汁粉、飲み行く?」


だから私は何も知らないふりをしておこう


「そうだな」


「じゃあ、今日は緑間の奢りね」


「なぜそうなるのだよ!?」


緑間のその言葉に笑いながら、そっと空を仰ぐ


どうか彼が抱え込みませんように






でも私の願いも空しく彼の表情が晴れることはなく、むしろイラつくことの方が増えていた


状況は変わらず、中学最後の年を迎えた

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作者名:ルナ | 作成日時:2014年6月28日 16時

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