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二十八輪 ページ29

HRを終え、嫌がる彼を強引に連れて教室を出る


「おい、川田!俺は祝勝会をするなど言ってないのだよ!」


「別にいいじゃない。今日は部活だってないでしょ?どうせ暇じゃない」


ずんずんと歩く


見えてきたのはあの薄い赤い看板の店


中に入ってお汁粉を二つ取って、代金を支払う


そんな私の行動を緑間は訝しげに見ていた


「これはどういうことなのだよ」


「言ったでしょ、祝勝会」


はい、とお汁粉を渡すと彼は渋々といった感じでそれを受け取った


「じゃあ、三位入賞を祝してカンパーイ!」


こつんとお汁粉をぶつけてそのまま口に運ぶ


甘さと時折口の中に入ってくる小豆


この間緑間に連れて来てもらって以来、私をすっかりお汁粉の魅力にとらわれていた


「どうしたの?飲まないの?」


微動だにしない緑間に問いかける


「別に祝うほどのことでもないだろう」


「そうかしら?だって三位入賞よ?三年の先輩がいる中でとれたのは結構すごいことだと思うのだけど」


そう言うと若干納得したように彼は頷いた


「それに、緑間が頑張ってくれたから。その労いも兼ねて」


「頑張った?俺が?」


「伴奏、やってくれたじゃない。しかもノーミスで。本当ありがとう」


微笑みながらそう言うと彼は照れたように俯いた


「お前が鼓舞してくれたからな」


「…どうしたの、急に?あ、まさか熱でも出た?」


あまりにも素直に反応するものだから、私は慌てて彼に問いかける


「熱などないのだよ!」


緑間はそう言うと勢いよくお汁粉を飲んだ


あ、そんな風に飲むと絶対…


「ゴホッ」


ほら、やっぱり


ハンカチを取り出して緑間に渡す


「小豆が変なところ入ったんでしょ」


なおも咳き込んでいる緑間を呆れながら見る


(それにしても綺麗な髪色だなー…)


新緑のような髪色が風に乗ってさらさらと揺れる


「緑間、ちょっと屈んで」


唐突すぎる私の頼みに彼は怪訝そうにしながらも、身を屈めてくれた


同じくらいの背丈になった彼の髪にそっと触れてみる


さらさらとした優しい手触り


(これで手入れしてないなんて言われたら恨むわ…)


そう思いながら髪を撫で続ける


「おい」


「なーに?」


「いい加減、やめるのだよ。いきなり何を言い出すかと思えば…。それにこの体制もきつい」


「んー、ヤダ」


だって触り心地がいいんだもん、と心の中で続ける


「おい」


「……」


「おい!」


そう言うと緑間は髪を触っていた私の手を掴んだ

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作者名:ルナ | 作成日時:2014年6月28日 16時

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