十八輪 ページ19
掴まれた右腕が熱をもつ
仮にも気になる人に引き止められたら、女子としては嬉しいことだろう
しかし今はそれどころではない
「ちょ、何よ。大丈夫だって言ってるでしょ」
半ばあきれたように言えば、握る力はさらに増した
「…質問を変える。伴奏をすることはできるのか?」
その言葉にぐっと詰まる
「……できるわよ」
「一瞬の間は何だ」
「何でもないわよ。もういい加減にして。大丈夫なものは大丈夫なの」
手を振り払い、廊下をいつもの倍の速さで歩く
そのあとを追ってくる緑間
足が長いからか、平然とその差を詰めてくる
「いい加減にするのだよ。何をそんなに強情になる」
「強情なのは昔からよ。今に始まったことじゃないわ」
ツンケンした態度をとり続ける
気が付くと目の前には体育館の扉
一度立ち止まって振り返る
「本当に大したことないから。気にしないで」
強気にそう言いきる
緑間は何か言いたそうだったけど背を向けて中に入る
中に入れば奈津美や琴音をはじめとするクラスメートがこちらに集まる
「真奈、大丈夫?」
「真奈ちゃん、平気なの?」
みんなの言葉に対応しながら平気だと答える
「伴奏はできるの?」
指揮者の子がそう聞いた途端、その場の空気が変わった
みんながこちらを見て、私の返事を待っている
「…うん、大丈夫よ。先生も大したことないって」
緑間に言ったように答える
私がそう答えた瞬間に、空気がまた変わった
あちらこちらから安堵の声が聞こえる
「じゃあ、平気だね!」
笑顔で言うみんなに、胸に少しの罪悪感と指先の痛みを感じた
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作者名:ルナ | 作成日時:2014年6月28日 16時