【黒子のバスケ】君の隣でもう一度 (ページ12)

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十一輪ページ12

彼と私の関係が変わったのはある日のLHRだった

その日の議題は合唱コンクールの役員決め

誰が指揮者、伴奏者をやるのか

かなりもめた

指揮者は自己推薦で難なく決まったが、問題は伴奏者

これは自己推薦は出なかった

伴奏はまずピアノができることが必須条件

尚且つ、それなりに練習に時間が割ける人

その時点でだいぶ候補者は減る

帝光は部活動が盛んに行われ、実績も良い

つまりその分練習時間も長い

特に私のクラスは運動部が多い

誰もやりたがらないのは正直目に見えていた

(ま、私も嫌だけどね)

私がピアノを弾けることは広く知られていない

親がピアノ教室を開いていることだって奈津美たち
くらいしか知らない

帰宅部といっても華道をはじめとする習い事をしている私は、
正直学校行事のために割ける時間なんてなかった

そんなことを考えていると叩かれた肩

顔をそちらに向けてみればそこにいたのは
先ほど指揮者に決まった女子

高い位置で結ばれている髪が揺れている

「あのっ…」

「何？」

愛嬌がよろしくないのは百も承知

誰でも構わず笑顔を振りまけるほど器用な人間ではないのだ

「えっと、川田さんのお母さん、ピアノ教室の先生だよね？ピアノ、弾ける…？」

遠慮がちに言う彼女を凝視する

どこでそれを知ったのか

何やら嫌な予感がする

「…確かに母はピアノを教えているけど。
　でもそれは私とは関係ないわよね？」

「うん、そうだけど…。川田さんもピアノ弾けるのかなって」

肝心なことを言わず、回りくどく話をする彼女に
苛立ちが募る

「…言いたいことあるならはっきりしたら？
　伴奏、やってほしいんでしょ？」

そう言えば彼女は小さく頷いた

(やっぱり…)

自分の予想が的中したことにため息をつく

(どうしよっかな…)

本音を言えばやりたくない

(でもこの状況はね…)

周りの視線は私たち二人に集まっていて、
みんなが私の返事を待っている

これで断れば敵役(ヒール)になるのは
目に見えている

(…拒否権ないって感じ)

ふと視線を感じ、その方向を見る

翡翠色の瞳と視線が合う

緑間真太郎＿＿＿

早く答えろと言わんばかり

(まあ、仕方ないか…)

運動部だらけのクラスなのは恨みようのないこと

もう一度小さくため息をつく

「…分かった、いいよ」