113.罰 ページ20
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額に感じる冷たさに目を開ける。
それを手で触れると水で濡れたタオルが私の額の上に乗せられていて、視界に映る木目の天井を見た時点でここは本丸なのだと理解する。
「お目覚めですか?主君」
顔を向けると平野くんが微笑んでいた。
……いつの間に私本丸に帰ってきたのだろう
歩いた記憶もなければ刀剣男士が車の運転が出来るという話も聞いたことがない。
『……つかぬことをお聞きしますが』
「はい?」
『私、どうやって帰ってきたのでしょうか』
「燭台切様におぶられて帰ってこられたのですよ」
……うわぁ
まさか学校からおんぶして帰ったというのか。絶対重かったのではないのだろうか。
「主君、食欲はありますか?」
『え……多分、あると思う』
「それは良かったです。今燭台切様が粥を作っておられますので、もう少々お待ちください」
お粥まで作ってもらっているなんて、どれだけ燭台切さんはお優しいのだろうか。
そして今気づいたが私は制服を着ていた筈なのに今は寝間着を着ている時点で絶対誰かが着替えさせてくれた筈。
「……あ、ご心配無用ですよ?ちゃんと下着が見えないように工夫して着替えさせましたので」
『……誰が』
「……乱兄さんが」
やはり男所帯というのも大変だ
もう今後絶対に風邪は引かないようにしよう、そう心に固く誓う。
すると障子の向こうに小さな影が映った。
「主君」
前田くんの声だった。
「入ってもよろしいでしょうか」
『……どうぞ』
前田くんは障子を開けると平野くんがいることに驚いたのか一瞬目を張るがすぐに冷静になり平野くんの隣に座る。
「お風邪を引かれているところ、申し訳ないと思いますが、主君、この前田に罰を与えてください」
「前田……?」
「刀解が許されないのなら、罰を与えてください」
『え……なんでもいいんですか?』
「主君の言葉に従います」
前田くんの言葉に平野くんは困惑している。
……一度、やって見たいことがあったんだ
私に頭を下げた前田くんに私は手を伸ばした。
「……っ」
『……うわあ、やっぱりサラサラしてる』
「……へ?」
思った通りだった。前田くんの髪はサラサラしていて手触りが良く撫で続けられる。
「違います!!」
『うわぁ!?』
「僕が求めているのは罰です!」
『だ、だってなんでもいいって……』
「これは罰ではありません!!」
『前田くんの顔が必死過ぎて怖いよ!』
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戦国娘(プロフ) - 作品楽しみに読んでます!あと、一つ報告が.....一護ではなく一期一振というので正しくは一期です!! (2020年1月20日 0時) (レス) id: 008b2d0f5c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:冬雪 | 作成日時:2019年6月15日 0時