57.漣ジュン ページ9
漣.
駅前を歩いていると見慣れた後ろ姿があった。
声をかけず、そのまま付いて行くと突然立ち止まりそいつは唐突に振り向いたのだ。
昔と変わらぬポーカーフェイス
『おやおや誰かの視線を感じると思ったら１日１回以上嫌味を言わないとストレスで死んでしまうという奇病を患った漣ジュンくんじゃないか』
「それが久し振りに再開したクラスメイトに対しての言葉っすか、良い趣味をお持ちで」
人のことは言えないけれど、よくもまあそんなツラツラと嫌味を思いついては口に出来るものだ。
花野A。中学の時の同級生、クラスメイト。
『久方振りだな。卒業式で君と殴り合い蹴り合い、夕日に照らされながら泣いたのを覚えているよ』
「そんな過去はない」
『せっかく再会したんだ、君に予定がなければこの後ゲームセンターで対戦でもどうだ？』
「……まぁ、いいっすけど」
久し振りに花野の隣を歩く。
こんな風に気さくなところは変わってなくて。変わっているところとしたら髪の長さ。胸は縮んだか？中学の頃より小さくなっているように見える。
『でも実際、君は悲しかったんじゃないか？』
「は？」
『最初はお互い志望校が同じだったはずなのに僕の急な進路変更に少し戸惑っていたじゃないか』
「そんな昔のこと覚えてない」
『そうか？あ、玲明学園はどうなんだ？』
「なんすか？俺から玲明学園のこと聞き出してなんらかの情報を握るつもりっすか？」
『なんらかの情報は自力で手に入れるつもりだから警戒しなくても平気だぞ？重要だなと思うところはわざと切り捨てる』
先程、花野は��自力で手に入れる��と発言をしているがこいつなら本気でやりかねないので警戒心を棄てられずにいられない。いや冗談抜きで。
「別に普通っすよ」
『彼女は作らないのか？』
「作る暇なんてないっすよ」
『勿体ないな、君はイケメンだから既に彼女がいるのだと思っていたんだがな』
……無意識に言ってるんだろうなぁ
俺はアンタとしか女子とまともに話したことがないんだ、なんてこいつに言ったら百パー調子に乗るだろうから敢えて言わない。
『彼女が出来たら教えてくれ。奪う』
「ぜってー教えねぇ」
『ライバルがいた方が燃えるだろ』
「その前にアンタを灰にした方が早そうだな」
『それは困る。君は今から僕と対戦するのだから』
そう言う花野は変わらずの無表情だが心なしかイキイキしていた。
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作者名：冬雪
| 作成日時：2019年4月17日 23時
