58.巴日和 ページ10
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「……さて、帰るか」
放課後の掃除を終え、鞄を持って教室を出る。
まだ正式なプロデューサーではない僕は仕事もなく用事もなく帰れるため今日も今日とてアニメを観るとしよう。靴を履き替えて昇降口をくぐり正門を抜けた時だった。
そこにいた青年と目が合った。
「Aちゃんじゃないか!」
『……巴先輩、なんで夢ノ咲にいるんですか』
「ちょっと野暮用でね。でもまさかAちゃんに会えるなんて偶然というよりこれは運命だよね」
『いや意味がわかりません』
「いや解るはずだよ。君は賢いからね」
『賢くても鈍い時だってありますよ』
このキャラも雰囲気も色も濃い人物は巴日和。
玲明学園の三年生であり天祥院英智と青葉つむぎとはなんらかの繋がりがあるとは聞いたことがあるが性格も育ちも属性も違う彼らにどういう共通点があるかは僕はまだ知らない。そもそも知りたくもないから別にいい。
そういえばもう一人彼らと繋がりがある高校生アイドルがいた筈だが名前が出てこない。誰だっけ。
……まぁいいや
『というか正門で待ち伏せしてないで普通に校舎に入ればいいんじゃないんですか?』
「入ってもいいんだけど面倒臭くてね」
『何が面倒臭いんですか。先輩この前普通に校舎に入って来てたじゃないですか』
「その前の手続きが面倒臭いんだよ。ほら夢ノ咲は一般公開以外は正門には監視役がいて生徒は身分の証明となる生徒手帳見せれば良いけれど僕はここの生徒ではないため入るためにはいろいろと手続きが必要なんだ。そこが面倒臭いんだよね」
『丁寧な説明誠に感謝しますが監視役の視線が此方に向いていて凄く居た堪れないので今後その話を口から発さないでください』
ただでさえここは正門。監視役がすぐ傍で見ているのだ。視線が鋭すぎて手汗が止まらない。
巴日和は正直すぎるのだ。何故今日に限って漣ジュン(保護者)が傍にいないのだ。
「ふふ、今Aちゃんが考えてる事が手に取るように判るよ」
『かっこつけたようなポーズをしないでください。無駄にイラつきますし苛立ちます』
「Aちゃん、それは同じ意味だよ。簡単に言えばイライラしているということだよね?」
『で?』
「君はジュンくんが居なくて寂しがってるね?」
『ハズレです。ですのでお帰りください』
「だから野暮用が」
『罰ゲームですので』
「あるって言ってるのに!」
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作者名:冬雪 | 作成日時:2019年4月17日 23時