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雨風にふらふら揺れるてるてる坊主。
少し頼りなさそうだ。
「本当に大丈夫なのか」
「てるてる坊主は効き目いいよ!」
「明日晴れなければ、容赦すまいぞ」
「怖い怖い。今にも人殺しそうな目してる。あ、いや元から…すみません。嘘です。すみません」
目を見ただけで凍りそうなマイナス温度の冷視線。
「毛利元就ってさ、目が怖いよね。ほんと、もう視線で人殺せるよね」
「おい」
「ぎゃあ!!すみません!思ってません」
「…貴様…「ちょっと調子乗りました。斬首はやめて。島流しなら辛うじて受けるから」
「人の話を…「あ、でもそれも嫌だな。また山賊に襲われそう。もう山賊はこりごりだ!」
元就がため息をついた。
ようやく、Aも顔をあげて黙る。
「何?」
「人の話を聞け」
「あはは…ご、ごめん」
「貴様、いつまで我のことを毛利元就と呼ぶ気だ」
「え?…駄目?」
「気持ちが悪い。やめよ」
「じゃあ、毛利」
「この城に毛利が何人いると思っておる」
「じゃあ、元就」
「呼び捨てとは良い度胸だな」
「注文多いなっ!…もー、めんどうくさい。あ、でも確かに全部名前言うのも長いね。面倒だし」
「貴様、何かあればすぐに面倒だというな」
「ほっといてよ。口癖だし。―――じゃあ、もう元就ね。決めた。うん、元就」
「………………」
不服な顔だ。
(なんだ。じゃあなんて呼べばいいのさ!!)
「まぁ、良い。二度と姓名で呼ぶな」
「若干癖になってたからね…たまに呼んじゃうかも」
「やめよ」
「気をつける」
びしっと形だけの敬礼をして、また作業に戻るA。
残りの二体にも頭から糸を通してわっかを作った。
「晴れたら顔を書いてね」
「貴様が書け」
「この二体は責任もって書かせてもらうよ」
「これも書けばよかろう。ついでだ」
「いや、それは毛…ごほん。元就の仕事でしょ」
「…勝手に仕事を増やすな」
押し付けたてるてる坊主。
Aは立ち上がって、二体のてるてる坊主を持った。
「そろそろ老婆も消えてるだろうし、戻るね。匿ってくれてありがとう」
「匿ったつもりなどない」
「そういえば、勝手に邪魔したもんねぇ。…まぁ、いいか!」
「じゃあ、また」と言ってひらひら手を振るA。
ぴしゃりと襖を閉め、駆けていく。
「“また”だと?…まさか、またここに来る気ではあるまいな。あのじゃじゃ馬娘め…」
その足音が消えるまで襖を見つめると、ふいにため息を零した。
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黒のコ屋(プロフ) - START*ANTEMISさん» コメントありがとうございます!5年ほど前の作品をリメイクしておりますので拙い文章ではございますが楽しんでいただければと思います!すでに30話ほど進んでるのに進展ないー!(笑)ここから頑張って二人の距離をエイエイ縮めてやりたいと思います! (2022年4月28日 19時) (レス) id: dbfae2dae8 (このIDを非表示/違反報告)
START*ANTEMIS - 黒のコ屋さんはじめましてSTART*ANTEMISと言います😺此方の作品を読ませて頂きましたが男勝りなヒロインは元就の所に嫁いで一月まだ進展が進む様子もないそうですが一体次回はどう展開していくのか!? (2022年4月26日 16時) (レス) @page23 id: 09a4a3c559 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:黒のコ屋 | 作成日時:2022年4月1日 14時