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「すっきりした!」
「よかったな」


毛利元就が立ち上がる。
つられて、自分も立ち上がった。


「次は腕輪でも作ろうかなー」
「城へ戻れ」
「えー…」
「まだ春とはいえ、風が冷たい。風邪でも引きたいなら好きにせよ」
「言われてみれば…ちょっと寒いかも」
「ここでも潮風は届く」
「潮風かぁー。いつか海に行きたいなー…なんて」


ちろりと毛利元就の顔をのぞけば、変わらずの無表情。


「………………」


っていうか、怒ってるのか呆れてるのかさえ分からないんですけど。


「近々、他所で戦がある」
「戦?どこ?」
「貴様は知らんでいい」
「相変わらず冷たいなぁ。――じゃあさ!それが終われば行ってもいい?」
「連れて行けとは言わんのか」
「自分で行けるよ。馬さえあれば!」
「一国の姫が聞いてあきれるな」
「一体、ここへ来てその台詞を何回聞いただろうね」


全員分合わせたら、軽く20回は超えてる気がする。
毛利元就だけでも、5回は聞いたな。


「それより、ありがとう」
「何のことだ」
「花飾り。似合うって言ってくれたから」


信じるよ。
そんな台詞言わないだろう、毛利元就から言われた言葉なら。




「ありがとう」




ニッと笑ってみせた。
姫らしくない笑顔だけど、それでもいい。
背を向けて、先に走って行く。
相変わらず女の着物は歩きにくい。
けど、照れくさいんだ。


(顔向けできない)


だから逃げた。





  * * *





A領。


「殿、長宗我部の方へ送った斥候が今帰ってきました」
「通せ」
「はっ」


毛利へ嫁いだA家唯一の姫が知らないところで、動き出す殺し合い。


「やはり殿の考えている通りでした」
「あの男、動きます」
「そうか…」


怪しい雲行き。
桜の花を奪う、雨。


「それと」
「?」
「姫様が忍びに気づいたようです」


男はハァと大きくため息をついた。


「思った以上に早かったな。…武芸を嗜むと、こういう不用意な所まで鋭くなる」
「如何いたしましょうか」
「一度忍びを退け。あ奴は慣れた気配に敏感になる。…あ奴に顔を見せたことのない忍びはいるか?」
「まだ育成中ではございますが、ひと月までには用意できるかと」
「そうか」


兄を失くし、国を守ると武芸に励んだ娘。


「A。わしを恨むなよ」


A家として生まれたからには、この悲劇もある意味運命なのかもしれない。
だが、心のどこかで娘の幸せを祈っている己がいるのも確かだった。

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黒のコ屋(プロフ) - START*ANTEMISさん» コメントありがとうございます!5年ほど前の作品をリメイクしておりますので拙い文章ではございますが楽しんでいただければと思います!すでに30話ほど進んでるのに進展ないー!(笑)ここから頑張って二人の距離をエイエイ縮めてやりたいと思います! (2022年4月28日 19時) (レス) id: dbfae2dae8 (このIDを非表示/違反報告)
START*ANTEMIS - 黒のコ屋さんはじめましてSTART*ANTEMISと言います😺此方の作品を読ませて頂きましたが男勝りなヒロインは元就の所に嫁いで一月まだ進展が進む様子もないそうですが一体次回はどう展開していくのか!? (2022年4月26日 16時) (レス) @page23 id: 09a4a3c559 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:黒のコ屋 | 作成日時:2022年4月1日 14時

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