染まれ染まれ。 3 ページ4
「だからあ、罵ってるつもりは!! ……はあ、もういいや」
「そのため息も中々……」
「もういいって。僕も片付け終わったら帰るから、兄さんに伝えといて」
そろそろ抑えないと貴重な欲望実現源である兄の機嫌を損ないそうだったので、真面目な声色を作って答える。
「わかった。伝えとくよ」
「いきなり元に戻るなよ……。とにかくじゃあな」
少し鼻歌交じりになりながら、切られた携帯をポケットにしまう。
おそ松の方へと向き直り、今し方託された伝言を伝える。
「片付け終わったら帰るってチョロ松兄さんが」
「うん。今大体聞こえてたけどな。わかった」
おそ松がそう言った瞬間、建物の外でギュルギュルギュル、という盛大な音が聞こえた。車が駐車場に勢いよく入ってきたらしい。
「おっ、末っ子様のお帰りだー」
その末っ子様からこれからゴミを見るような目で見られるかもしれないというのに、この目の前の長男は呑気そのものだった。
キキキィィーーーッ、という車を建物に直接横付けする音が聞こえたのち、バンッ、バンッ、とドアを開け閉めする音、それからちょっとして、何か重量のあるものが落ちる鈍いドスン、という音が聞こえる。……どうやら相当お怒りらしい。
「おいそこにいる長男さっさと出てこい!!」
顔に似合わない地獄の底から響いてくるような声がその後すぐに響いた。当事者でないこっちも気が滅入ってしまうようなそれに思わずおそ松兄さんの顔を窺うと、さすがにやべ、という引きつった顔をしていた。
(ドンマイ、兄さん。だけど自業自得だね)
一松はそんなことを思いながら合掌した。
.
「えっと……何でこいつは顔が血まみれで床に転がってるんでしょうか、トド松さん……?」
おそ松がおそるおそるといった感じでトド松に話しかけると、トド松はぶっすーと不機嫌な顔をしたまま、床に転がる両手両足をガムテープで固定され、口もガムテープで塞がれた男を一瞥した。
興味もなさそうな視線を男に向けると、すぐに背け、トド松は何とも投げやりな口調で言う。
「知らなーい。トランクにそのままぶち込んだから頭でもぶつけたんじゃないの?」
(まああの運転だったらな……)
おそらくおそ松も思ったであろうことを内心思う一松。
脳震盪を起こさずに、額を切ったのは運が良いのか悪いのか……。まあ、敵に捕まってる時点で運は既に悪いに違いないのだろうが。
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野口 - 今回のお話は、なんて言うか、さすが兄さんみたいな感じで、かくなるうえは!新星病みこわかわいい! 次回のお話もとても楽しみにしてます! (2017年11月14日 22時) (レス) id: 19852ab4e1 (このIDを非表示/違反報告)
野口 - 読むの遅くなりましたが、今回も最高でした!パーカー松本当に好きで、自分好みの文章を書いてくださるAsterさんに、自分好みのお話を書いていただいて本当に嬉しいです! (2017年11月14日 22時) (レス) id: 19852ab4e1 (このIDを非表示/違反報告)
Aster - 野口さん» ありがとうございます! 更新が遅くなって申し訳ありません! 今回の話は全然自信が無いです……。時間を見つけてぼちぼち執筆していきますのでよろしくお願いします。 (2017年8月15日 18時) (レス) id: 6f6df49f3d (このIDを非表示/違反報告)
野口 - 新作おめでとうございます! (2017年1月19日 18時) (レス) id: 9a188fa29d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Aster | 作成日時:2017年1月13日 22時