【オリオンの刻印】間違えて日本代表に選ばれちゃった系女子、世界を相手に奮闘する。

その４５：稀に見る真面目な姿 ページ48

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ミーティング終了後、「各々の課題を克服しよう」という円堂の指示のもと、イナズマジャパンの選手たちは間も無くしてそれぞれの練習場へとミーティングルームから散っていった。

仲間たちと同じようにミーティングルームから立ち去ろうとする円堂に、一星は熱意の込められた表情と声で「円堂さん！」とその背中を引き止める。



「どうかしたか？」

「あの……よければこの後、練習に付き合ってもらえませんか？」

「おおっ！ そういうことなら、ドンと来いだ！」

「ありがとうございます！ 円堂さんに僕のプレーを見てもらえるなんて、夢みたいですっ」

「はは、大袈裟だなあ」



頰をかきどこか照れくさそうに笑う円堂と、その隣で嬉しそうに肩を並べる一星。

……そして、そんな二人の後ろには、何やら訝しげに眉を顰めて二人の姿に鋭い視線を送る鬼道。



「──一星くん、すっごい嬉しそうだね」

「……ほたる」



そんな鬼道の背後からいつもの笑みを顔に浮かべ話しかけるのは、お馴染み六連星ほたるだ。

どうやら鬼道と同じように、彼女も扉の影から二人の様子を伺っていたらしい。



「そんなに羨ましいなら、鬼道くんも練習に混ぜてもらえばよかったのに」



突然聞こえたほたるの声に少しだけ肩を揺らした鬼道に向かって、ほたるは構わず話を続ける。

緊迫した雰囲気の鬼道に向かってどこまでも呑気に話しかけるほたるの姿にはどこか違和感を覚えるが、鬼道も鬼道でそれを口にすることなく改めて「ほたる」と彼女の名前を呼んだ。



「お前にだからこそ聞くぞ」

「あ、うん。なに？」


「──一星充について、お前はどう思っている？」



普段よりも幾分か低いトーンで問われたそれは、返答をするには単純なようでいて難しい。

ほたるは珍しく困ったように言葉を詰まらせた。素直に「苦手」と告げるかシラを切るか、迷っているのだろうか。


「あー……」と曖昧に唸るほたるの姿を見つめ、鬼道は真剣な眼差しで彼女の言葉を待つ。その間もほたるは必死に頭を働かせ、その様子はまるで目の前にいる鬼道と賭け事をしているかのようだった。

……そして、彼女がようやく絞り出した答えはこうだ。



「──この感情に強いて名前をつけるなら、“苦手意識”ってのが一番近い……のかもしれない、かなあ？」



曖昧な表情に、曖昧な言葉。

それは、鬼道が初めて目にするほたるのまさに困った(・・・)ような姿だった。

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