【オリオンの刻印】間違えて日本代表に選ばれちゃった系女子、世界を相手に奮闘する。

その４６：司令塔からの協力要請 ページ49

「……それなら、質問を変えよう。この“大会”について、何か思うところはあるか」



曖昧なほたるの姿を目の当たりにした鬼道は、自分の問いが最適なものではなかったと判断したのか、論点を「一星充」から「大会」に変更して改めて質問をし直す。

すると、ようやくほたるはいつもの調子を取り戻し、「なんで？」と質問に質問で返すというなんとも言えないバッドコミュニケーションを繰り広げてみせた。

今度は鬼道が戸惑いを見せる。



「質問をしたのは俺のはずだが……」

「まあまあ。そんなことを聞くってことは、鬼道くんは少なくともこの大会(F F I)について色々と思うところがあるってことでしょ。それなら、私が質問に答えるよりも先にまずは鬼道くんの話を聞きたいなーって思って」

「……なるほど、ご名答だ。やはり並みの観察眼と分析力ではないな」



ほたるの話に頷きながら、鬼道は面白そうににやりと口角を上げた。

相変わらずの自分の能力に対する鬼道のその買いかぶり具合は、ほたるも思わず「ちょ、だから違うって」と動揺気味に否定しにかかるほどだ。



「こんなのフツーだよ、フツー」

「フッ、まあいいだろう。全てが明らかになるまで他言はしないつもりだったが、お前の言うことも一理ある。まずは俺の見解を話すとしよう」

「おおっ、待ってました！」



ほたるは楽しげに好奇心で目を輝かせた。



「──豪炎寺は、相手選手との接触プレーのタイミングで、意図的に誰かから目眩しをされたのだと思う。そのギミックは俺にもわからないが……俺は、どうしてもあの豪炎寺がそう簡単にやられてしまうとは思えないんだ」

「うん、それに関しては私も同感だよ。ヒロトくんも同じような目にあったみたいだし、偶然とは言い難いよね」

「ああ。それに、韓国のキャプテンであるソクの退場にも不審な点が多かっただろう。チームの選手たちは、あからさまにソクを狙っていた。……これらの事態は、少なくとも絶対に“普通の世界大会”で起こり得ることではない」

「……つまり、この大会は“普通の大会”ではないと？」

「そういうことになるな」



ゴーグルのレンズの奥に隠された瞳は、真っ直ぐにほたるの双眸を捉えている。

鬼道がわざわざほたるにこのような話をしたことには、当然大きな意味があった。



「(──司令塔からの協力要請、ってところかな)」



ほたるは鬼道の本意を心の内で察すると、どこか楽しげに頰を綻ばせてみせた。

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