九 ページ10
少女が青を突き放した日から数日が経った。あれから雨は休まず降り続けた。雨や雨で冷えた空気は少女や弟妹達の小さな身体から体温を奪っていった。朝起きると雨は止んでいたが弟妹の一人が熱を出していた。
「イチ!」
「一番しっかりして!」
「イチ兄ちゃん死んじゃやだ〜!」
弟妹が泣き叫ぶ真ん中で熱を出した弟を抱き上げ呼び掛ける少女。買われた人間は戸籍も名前も消されてしまう。つまりは病院で診察を受ける事が,薬を貰う事が出来ないのだ。それが意味する事は病気になった先に行き着く結末は運良く治るか死かの2択であった。
「イチ!」
彼女等には名前が無い。故にお互いでも主人にも"1番","イチ"と来た順番で呼ばれている。
「姉ちゃん,イチが死んじゃうよ!」
少女の手で苦しそうに息をする少年は目を覚まさない。周りでどれだけ騒いでも起きないのだ。彼女達に今頼れる人は思い付かない。______唯一人を除いて。
「…カラ松,さん…」
ふと少女が青の名を呼ぶ。話は聞かない,帰れと突き放しておいて何と都合の良い事だ。然し彼女にはカラ松以外に頼れる人が思いつかなかった。突き放したカラ松に縋り付きたい程少女にとって弟とは大切な存在なのだ。
「…皆,此処で待ってて」
少女は弟を抱き上げた儘立ち上がり路地裏の外へと向かう。お姉ちゃん,と弟妹達が泣く声を背に少女はカラ松を探しに向かった。
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水無瀬(プロフ) - ペコまる。さん» はじめまして。有難う御座います。一応年齢設定としましてはおそ松達は20代前半,夢主は16~17辺りのつもりで書いておりますが,何せ栄養不足の発育が悪い状態ですので少女表記にしております。 (2019年9月8日 21時) (レス) id: 7d743ed39b (このIDを非表示/違反報告)
ペコまる。 - とっても面白いです!ところで何歳くらいの設定ですか? (2019年9月8日 18時) (レス) id: efabf24793 (このIDを非表示/違反報告)
水無瀬(プロフ) - 紅夜の黒猫さん» はじめまして。有難う御座います。楽しんで頂けたのでしたら幸いです。とても励みになります,頑張ります。 (2019年8月8日 21時) (レス) id: 7d743ed39b (このIDを非表示/違反報告)
紅夜の黒猫 - 水無瀬さん» はじめまして。作品読ませてもらいました。とても面白いです。設定といい、内容といい、よくできてますね!続き楽しみにしています (2019年8月6日 15時) (レス) id: 49d4392d73 (このIDを非表示/違反報告)
水無瀬(プロフ) - 暇人さん» はじめまして。有難う御座います。とても励みになります。楽しんで頂けたのでしたら嬉しいです。この先も作者の妄想にお付き合い頂けましたら幸いです。 (2019年7月16日 8時) (レス) id: 7d743ed39b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:水無瀬 | 作成日時:2019年7月14日 2時