八 ページ9
少女と青のやり取りから数日後,アジトの一室の鏡の前でネクタイを締める男の姿。鏡の横には渡されなかった青い薔薇が花瓶に飾ってある。
「カラ松にーさん,あの子のとこ?」
「あぁ。十四松も来るか?」
「ううん。俺これから一松にーさんで素振りするんだ!」
「…ん?」
十四松の言葉に疑問を持ったカラ松が振り向くともう既に十四松の姿は無かった。相変わらず行動が早いなと苦笑を浮かべる彼,カラ松も少女と同じく兄弟をとても大切にしている。
「待ってろよ,カラ松girl!」
櫛で髪を整え開いたままの扉から自室を出て少女の元へと向かう。
外に出ると雨が降っていた。今まで彼にとって気にもとめなかった雨は少女の存在を知り焦りへと変わる。雨の中傘を差し歩く人混みの中を駆け抜ける。周囲から奇異の目で見られるが気にならない。
「無事で居てくれよ,カラ松girl!girlのbrother達…!!」
こんな時までイタさを忘れないのは流石と言ったところか。無意識に今まで乗り越えてきたのだから大丈夫だと思っているからか。
少女達の住む路地裏の奥まで着くと段ボールで作られた簡易的な家が作られていた。然し段ボールは段ボール。外は濡れてボロボロになっていた。外観では中が濡れているのか分からない。
「が,girl達,大丈夫か?」
何処か別の場所で雨宿りしている事を願うカラ松。そっと声を掛ける彼には中を覗く勇気など無かった。
「…カラ松,さん…?」
雨音に紛れてか細い綺麗な声がカラ松の耳に届いた。こんな状況でなければ名前を覚えていてくれたのかと嬉しくなったのであろうが今はそれどころでは無い。
「girl,無事か!?」
駆け寄るカラ松の目に写ったのは少女と5人の弟妹が身を寄せあっている姿だった。5人の弟妹は眠っていて少女は姿の見えたカラ松に驚いている。
「…何で,居るんですか」
弟妹達が起きないように警戒しつつ小さな声で話す少女に声が聞こえづらいのか近付くカラ松。
「雨が降っていたから心配になったんだ」
「帰ってください」
「だが…」
「帰ってください。貴方の話を聞く気はありません。」
カラ松は早く少女を兄弟に会わせたかった。自分達と同じ様に弟妹だけを信じ大切にする人だ。気に入られるだろう,と。然しその願いは少女により阻まれてしまう。
「分かった。今日は帰ろう。だが俺は諦めが悪いんだ」
少女達の前から去ったカラ松はこの氷のような少女の心を溶かすには時間がかかりそうだと一つ溜息を落とした。
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水無瀬(プロフ) - ペコまる。さん» はじめまして。有難う御座います。一応年齢設定としましてはおそ松達は20代前半,夢主は16~17辺りのつもりで書いておりますが,何せ栄養不足の発育が悪い状態ですので少女表記にしております。 (2019年9月8日 21時) (レス) id: 7d743ed39b (このIDを非表示/違反報告)
ペコまる。 - とっても面白いです!ところで何歳くらいの設定ですか? (2019年9月8日 18時) (レス) id: efabf24793 (このIDを非表示/違反報告)
水無瀬(プロフ) - 紅夜の黒猫さん» はじめまして。有難う御座います。楽しんで頂けたのでしたら幸いです。とても励みになります,頑張ります。 (2019年8月8日 21時) (レス) id: 7d743ed39b (このIDを非表示/違反報告)
紅夜の黒猫 - 水無瀬さん» はじめまして。作品読ませてもらいました。とても面白いです。設定といい、内容といい、よくできてますね!続き楽しみにしています (2019年8月6日 15時) (レス) id: 49d4392d73 (このIDを非表示/違反報告)
水無瀬(プロフ) - 暇人さん» はじめまして。有難う御座います。とても励みになります。楽しんで頂けたのでしたら嬉しいです。この先も作者の妄想にお付き合い頂けましたら幸いです。 (2019年7月16日 8時) (レス) id: 7d743ed39b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:水無瀬 | 作成日時:2019年7月14日 2時