【あんスタ】演劇科のアイドル

5話 しつこい勧誘 ページ6

「ほら！ここが職員室だ。」

「ありがとうございます。仁兎先輩。」

「別におれのことはにーちゃんって呼んでいいんだぞ。」

「さすがにそれは……」


高校生がにーちゃんはちょっとキツいかもしれない………


「それじゃあ。」

「またにゃ！」



最後の最後で噛む先輩を微笑ましい気分で見送り、職員室に入り先生を探せばすぐに見つけることができた。



「椚先生。これ今日までの書類です。」

「あぁ、橘君。こういうのは余裕をもって提出しなさい。」

「すみません。忙しかったんで。」


笑顔を張り付けて謝れば先生はハァとため息を吐く。




「……ところで転入の件はどうですか？」

「何度も言いますけど僕は演劇科で満足してます。」



それに僕が演劇科にいることで普通科の女子達はアイドル科へと侵入する事件が激減した。

公演だって毎回満席。不満はない筈だ。



「君のルックスと実力はアイドルに向いている。学費だってある程度は支援するつもりだが……」

「無理やわ〜」


にまっと笑いながら手をヒラヒラすれば先生は本日何回目か分からないため息をこぼす。



「とりあえず見学だけでもしていってください。」

「いいですけどここ広いから迷子になりますよ。」



現に先程迷子になっていた。先生は顎に手をやり悩んでいれば……


「先生。こちらのプリントを提出しに来ました。」


透き通った声が聞こえて振り返ればそこにはワインレッドの髪をした美青年が立っていた。


「ちょうど良かった、朱桜君。彼を案内してあげてください。」

「え？」

「ちょっと先生……」

「実際に見てみたら貴方の気が変わるかもしれませんからね。」




……………どうやらこの先生は諦めるという言葉を知らないらしい。

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