梶井氏、檸檬愛好家 ページ36
──目を覚ますと、私の部屋に居た。……あれ、おかしいな。私昨日、太宰さんとバーに飲みに行って、其れで──全く記憶がない。
ヤベェな、何か迷惑とか掛けてないかな。
そんな憂鬱に身を浸しながらも、おはよう御座います、と挨拶しながら太宰さんの仕事部屋に入る。もっとも彼が仕事をしていることはほとんどないのだが。
今日もどうやらその類だったようで、「おはよう」と軽やかに彼が笑った。至って普通の対応に、別に何もなかったのではないかと安心感が生じた。いや、まずは訊かんことには始まらない。思い切って口を開き、『あの、昨日って何かありました?』と訊いてみる。
太宰さんはぽかんとして、それから一拍遅れて「へ、憶えてないの?」と間抜け面を晒した。彼のそんな顔なんて全く見ることは無いのだが、私はそれより先に自分の醜態を心配したので、『全く』と伝える。
太宰さんは、あ〜、と少し視線を彷徨わせた後、私を見て云った。
「凪ちゃん。此れから私以外の男の前で、お酒飲んじゃ駄目だよ」
『……え?』
「絶対駄目だからね。分かった?」
『ちょ、ちょっと待って下さい、結局何があったんです!?』
……結局彼は何も答えてはくれず、私は資料を届ける為に奔走することになっていた。
目的地であろう部屋の前に辿り着いて、一度資料を持ち直してからコンコンとノックをする。それから扉を開けて、
視界が暗転。
「わッ!!」
『わああッ!?』
いきなり耳元で大声が聞こえ、跳ね起きる。どうやらソファに寝かされていたようで状況に理解が追い付かない状態の私に「やぁっと起きたあー」との声が寄せられる。
その声に見上げてみれば、特徴的な髪型の金髪にゴーグルをしている、梶井さんがいた。
『か、梶井さん……?』
「あれ、僕の事知ってるの?」
彼は首を傾げる。数年後に与謝野さんに解体されてます、とは云えない。曖昧に笑みを浮かべたが、そもそも私はどうして気絶なんかを。
そう云えば、彼は何ともまぁ分かりやすく顔に汗を滲ませた。
「……檸檬爆弾、間違えて爆発させちゃったんだよね」
『ぶん殴って良いですか。良いですよね』
「疑問形ですら無いんだけど! 済みませんでした!」
綺麗な九十度でお辞儀をして謝罪する梶井さん。それを胡乱げに見て、私は此処に来た目的を思い出した。私が持ってた書類は、と云うと、もう受け取ってるよと返答された。それならば、もう私は此処には用はない。
バイバーイ、と何ともお気楽そうな声が聞こえた。何かウザく感じた。
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白夜の世界 - ユーヒ様、申し訳御座いません。ですが、優姫ちゃんは死んだおりません。作品の中では余り細かい描写をしていないのですが、今昏睡状態になっております。…あと、本当にどうでもいいかもしれませんが、ユウキちゃんです…。御気分を悪くさせてしまい申し訳御座いません (2019年4月3日 7時) (レス) id: 15ab1d9eda (このIDを非表示/違反報告)
白夜の世界 - ゆきな様、ありがとう御座います!其方もお体に気をつけて下さい! (2019年4月3日 7時) (レス) id: 15ab1d9eda (このIDを非表示/違反報告)
ユーヒ - 夢主の親友が私と同じ名前で、死んだって聞いて何かショック。('' ) (2019年4月3日 1時) (レス) id: 1dd8890cea (このIDを非表示/違反報告)
ゆきな(プロフ) - ヤバい太宰さん変t))ん"ん"…織田作かっこいい!(中也さん推し)これからも無理せずに頑張ってください (2019年4月3日 0時) (レス) id: e7791cc44f (このIDを非表示/違反報告)
白夜の世界 - 船長様、ありがとう御座います!此れから続編へ行きますので、どうぞ次の話も、宜しくお願いします! (2019年4月2日 15時) (レス) id: 15ab1d9eda (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:白夜の世界 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/nisui03101/
作成日時:2019年2月24日 21時