月の子２-もうひとりのかぐや姫-【カカシ、オビト夢】

43「金稼ぎと汚れ」 ページ43

.


霧隠れでも暗部部隊に所属すればお面を配布される。
白の面のように細く狐目なものが多いが、私のは写輪眼を使うためもう少し穴の広いデザインだ。
これをつけて任務に出れば、何者でもない誰かになったような気がして非情になれた。

それでも、初めて人を殺す時は躊躇した。
殺す以外に方法はないのか、いつも思う。
それなのに、首の呪印が私を苦しめ、やらなければやられる。これが忍びの現状だと思い知らされ、2回目からはもう、面を被った「誰か」がやってくれるようになった。


人が死ぬのは敵だけじゃない、仲間も簡単に死ぬ。
治療はさせてくれなかった、使い捨ての駒のような存在なのだ。

実戦の中で自分の力の成長を感じる。木の葉にいた時と比べものにならないくらい。
いや、私の術は複数人殺すのに向いていたのが正しい。皮肉にもここが合っているということなのかもしれない。


あっという間に1年が過ぎた。身体はいつもどこか痛い。口数も減った。

上役に呼ばれ、汚れた血を洗い落としてから出向く。


「だいぶ髪が伸びたな。縛って誤魔化してるようだが、少し整えてこい。前みたいに可愛くな」

憎い笑みを浮かべながら命令される。どうしてそんな事あなたに指示されなくてはいけないのか。

「まだまだ身代金まで届かないだろ？ 賃金のいい話が来てる」

ファイルを渡される。中には他国の大名が数名。

『これがなんですか』
「マニアのリストだよ」

マニア？ なんの？

「世の中の金の動きはたくさん種類がある。物流、情報、武力……だが、それら大名が払うのは大名個人が欲しがるものだ」


愛人をやってこい。そんなふざけた命令だった。
若干13歳、若くて貴重で金が弾むとか言われても嫌なものは嫌。

『ぅぐっ…！』

最近の任務は慣れていて、久しぶりに首の呪印で締められる。

髪を整え、服装は木の葉の頃の格好がいいらしい。準備して大名や富豪たちのところへ連れられることになった。



＿＿＿＿
給料はいい。気に入られれば上役へ渡すお金のほか直接渡してくれる。
影分身と幻術で相手を騙し、実際に体を汚すことはなかった。でも影分身は情報が本体に集約される。嫌な記憶が募りに募り、心が疲弊していく。


「ご苦労だったな、さすがの美貌、殿方も満足されたそうだ。次は暗部の任務の準備にいけ」

黙って面を被る。安心した。
顔のせいでこんな目に遭うならずっと隠していたい。
そしてこの日も人を殺した。

44「カカシの思い」→←42「変わらぬ里」

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す