1話 「お面の男」 ページ3
辺り一面には巨大な穴がいくつも空いていた。死体もない。血もない。瓦礫もない。ここにはこの穴以外なんの傷跡もついていなかった。多分何も知らない誰かがここへ来てもただのボコボコしたところなんだなあって思うぐらい。そんな、ほかのより一回り大きい穴の中で私は倒れていた。
自分がした事がよく分からなかった。これで良かったのか？普通ならここで罪悪感を感じるだろうが私は何も感じなかった。寧ろ心底嬉しかったのかもしれない。
解放された……やっと、自由になった。
私は生まれたときからずっと鎖で繋がれていた。扱いは乱暴でろくに食事も与えてもらえなかった。私は空腹は感じるが、飢えて死ぬことはなかったからだ。しかしそれでも何日も食べ物を口にしないと死にそうなほど苦しい。死んだほうが楽なのかもしれないと1度は考えてみたものの、それさえも許されなかったみたいだ。
そんな憎らしい奴らに私は復讐をしてやった。
殺してやった。
今迄なぜ気づかなかったのだろう？
私にはその力があったのに。生まれたときから鎖で繋がれていたせいか、私はここからは「絶対に逃げれない」と考えていた。
なのに脱走は簡単の「か」の字にも及ばないほど楽だった。私の力を恐れ、地下の牢獄に封印したこの里の長をはじめ、私はここを地図から消してやった。国に恥となるこんなところを態々消してあけたんだから感謝して欲しいくらいだ…。
まぁ……それはさておき。これからはどうするべきか。ここにいてもいずれ見つかり殺されるだろう。場所を変えよう…………
と、その時
ｶﾞｻｯ
人の気配がした。
一瞬焦ったが、ここで逃げても怪しまれるだけだろうし、そのまま死んだフリを続けることにした。
「……子供？」
微かに声が聞こえた。
「……さ……こいつ…った…」
うまく聞こえないがどうやら自分の事を話されているようだ。
ｻﾞｻﾞｯ
……一人？
足音は私に近づいてきた。思わず息を止めた。これが他国の忍だとしたら…………終わりだ。
この里を潰すのに力をほとんど使い果たしてしまったため、ここで忍に捕まったら終わりだ。
「……死んだフリはもうやめたらどうだ。」
……………！！な？！
「……ダレだ？」
ガバッと起き上がり、男を睨みつけた。
黒髪でグルグルの仮面をつけ、顔は見えなかったが、どうやら他国の忍ではなさそうだ。
私の質問に仮面の男は、少し間をおき、答えた。
「………………………うちは…………オビトだ」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 46人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：いっちー | 作成日時：2017年8月17日 23時
