第百二十訓 ページ26
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坂田「さて、眠気覚ましに一丁行くか。てめーのネーちゃんにも友達だってウソぶっこいちゃったし」
沖田「…クマ」
坂田「あ?チンピラに殴られたんだよ」
そう言って前を行く二つの背中を見送る。あの人は想像の斜め上をいくから面白い。
やがて二人の背も見えなくなり、誰もいなくなったことを確認して、壁に預けていた背をズルズルと下にずらして座り込む。思ったより私の風邪は悪化しているらしい。昨日から一睡もしてなかったから、当然と言えば当然だが。
私が此処に留まった理由は、ミツバ姉が目を覚ました時、誰もいないのは寂しいだろうと思ったからだ…と言えば聞こえは良いが、本当のことを言うと今にも倒れそうなくらい体が辛いのだ。
このままでは駄目だと大きく深呼吸をして、呼吸を整える。膝に手を付きゆっくり立ち上がると「沖田様のご家族の方ですか…?」と遠慮がちに声を掛けられた。
相手は医者で、そうだと答えると「手は尽くしましたが、もう…」と、先程の彼と同じように顔を伏せる。言い切らないのは医者なりの最期の優しさなのだろうか。どちらでもいいが、言いたい事は伝わった。
頭を下げて礼を述べ、静かにドアを開ける。
ミツバ「……A…ちゃん、?」
「っ、びっくりした…起きてたの?」
部屋の中にいた彼女は、やっぱり綺麗で。
髪に触れようと手を伸ばした時、不意に名前を呼ばれビクリと肩を鳴らす。
いつもと比べ何十倍も弱々しい声と荒い呼吸に、胸の奥が締め付けられたかのように苦しい。
ミツバ「えぇ…フフ、怖がりな所は昔と変わらないのね」
「そんなことないよ。今のは不意打ちだったから…少し驚いただけ」
不貞腐れた様に言えばまた笑うので、私も少し頰が緩む。普段と変わらない会話な筈なのに、普段のように目が合わせられないのは何故だろう。
「…私ね、ミツバ姉のことが大好き。
私に手を差し伸べてくれて、血も繋がってない私を家族みたいに迎え入れてくれて…本当に嬉しかったの」
声が震えないよう注意しながら、一言一言確認してゆっくりと話す。
昔、大切な人を目の前で亡くして、一層のこと自分も死んで楽になりたかった。そんな時に生きる希望を与えてくれたのがミツバ姉だった。
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クローバー - タイトルの第が大になっていますよ (2022年10月23日 19時) (レス) @page25 id: f7867713b9 (このIDを非表示/違反報告)
柊ひな(プロフ) - ミクさん» 洒落にならない数々のミス申し訳ありません。一通り目を通し修正してきました。ココがまだおかしい、という箇所がありましたらお手数ですがまた教えて頂けると幸いです。すみません。 (2021年8月5日 20時) (レス) id: d757d08cdf (このIDを非表示/違反報告)
ミク - 時々、坂田「銀さんたぶらかして」みたいな感じになって最初の「の前の名前が違っていることがあります (2021年8月5日 13時) (レス) id: c0f1b840e0 (このIDを非表示/違反報告)
柊ひな(プロフ) - MEIさん» ありがとうございます!テスト、なんとか終わりました!!テストお疲れ様です!2週間以上も前ですけど(笑) (2019年6月7日 7時) (レス) id: bb6b3491df (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:柊ひな | 作成日時:2019年5月12日 12時