第百十三訓 ページ19
沖田side
気に食わない。
「…私も…連れていって」
沖田「土方さん、」
昔から、アイツは気にくわない奴だった。
沖田「一手ご教授してもらってもいいですかね」
今も昔も頭には剣のことばかりなアイツは予想通り稽古場にいた。肩で息をして、俺を見やがる。
口が開かれることはなかったが、素振りを止め了承の意を見せたソイツと向き合い、竹刀をぶつけ合う。竹刀と竹刀の交わる音だけが静かに響く中、最初に口を開いたのは俺だった。
沖田「近頃姉上の周りをかぎまわらせているようで。一体どーいうつもりなんですかね。これ以上姉上の幸せブチ壊すのはやめてもらいてーんですが」
嫌でも毎日顔を合わせているのだ、奴のしている事ぐらい直ぐに分かった。大方、山崎辺りを姉上の側に置いているのだろう。
土方「転海屋。不逞浪士と大量の武器を闇取引している嫌疑がかかってる。密輸で仕入れた武器を浪士どもに高値で売りさばいてやがる。ありゃ闇商人だ。
おめーの姉貴の旦那は、俺達の敵なんだよ」
そう普段と変わらない口調で、淡々とアイツは言い切った。敵、つまり粛清対象。
この発言も想定内…ではなかったが、だからなんだ、とは思った。それが身内の旦那なら尚更に。攘夷志士がどんな武器携えて来ても俺達が斬ればいい。
廃刀を余儀なくされた侍が稼ぎ口を見つけるため不当な場で殺し合いを演じていたように、天人が来て異種の物が流れるようになれば元からいた商人は居場所を失くすだろう。
この御時世、清濁併せ呑む位の器量がなければ商人はやっていけない。それに、
沖田「それに商売はともかくあの人の人柄はアンタも見たでしょう。あの人は心底姉上に惚れてますよ。きっと幸せに…」
土方「そいつァ俺に奴を見逃せと言っているのか」
沖田「アラ、そう聞こえやせんでした?」
手を止めれば顔を顰め、気が失せたと言って俺に背を向け出口に向かって行く。自分勝手な野郎だと心の中で非難し、その背に向けて突きをした。当たりはしなかったが、代わりにこちらに向き直る。
急なことで驚いたのか咄嗟に身を引き、何すんだと怒鳴りかけたアイツの目が、今度は大きく見開かれた。
その驚きは俺の発した言葉からなのか、いつもとは違う俺の様子からか、恐らくどちらもだろう。
沖田「もう…長ェこと…ねぇみたいなんでさァ」
.
253人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「銀魂」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
クローバー - タイトルの第が大になっていますよ (2022年10月23日 19時) (レス) @page25 id: f7867713b9 (このIDを非表示/違反報告)
柊ひな(プロフ) - ミクさん» 洒落にならない数々のミス申し訳ありません。一通り目を通し修正してきました。ココがまだおかしい、という箇所がありましたらお手数ですがまた教えて頂けると幸いです。すみません。 (2021年8月5日 20時) (レス) id: d757d08cdf (このIDを非表示/違反報告)
ミク - 時々、坂田「銀さんたぶらかして」みたいな感じになって最初の「の前の名前が違っていることがあります (2021年8月5日 13時) (レス) id: c0f1b840e0 (このIDを非表示/違反報告)
柊ひな(プロフ) - MEIさん» ありがとうございます!テスト、なんとか終わりました!!テストお疲れ様です!2週間以上も前ですけど(笑) (2019年6月7日 7時) (レス) id: bb6b3491df (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:柊ひな | 作成日時:2019年5月12日 12時