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「もう寝ても大丈夫だからな」
解熱剤を飲まされて寝ていた私は、おじさんに言われた言葉を思い出してベッドに横たわっていた。おじさんは今、後片付けをしている。…そういえばお粥に気を取られていたが、あの人の数値は一体幾つなのだろうか。まあ、気にしても仕方ない。ここはお言葉に甘えて寝かせてもらおう。
私は布団に深く被り、体を温めた。解熱剤や先程お粥を食べたお陰か、朝より体は楽だった。…ただ、先程までずっと眠っていたので眠気は襲ってこなかった。
「…はぁ」
目は冴えていても、頭の中はすっきりとはしていない。ボーッとする。目を瞑ってみても、変わらなかった。しばらく眠れそうにはないな、と思いながら寒さに身を縮こませていた。
こうも何もすることがないと、色々と考えてしまう。保護者のことに、おじさんのこと。…今世のこと。考えても仕方ないのに、とは分かっている。と言うよりも考えたところで何かなるわけでもない。例え二人が世紀を揺るがす殺人犯だろうと、身も震わせるような放火魔だろうと、別に私に生存意欲があるわけではないのでご勝手にどうぞといった感じだ。
そもそも3歳児が出来ることなんて限られている。ただの園児がどうやって大の大人の犯罪など止められる?
まあ、ただの例え話に過ぎない。
…結論から言うと、今考えていること全てが“無駄”なのだ。
「…」
そうだ、私はただ何も考えずに終わりが来るまで生きていればいいのだ。何事にも終わりはあるのだから、記憶を引き継いで転生なんて永遠に続く起こるわけではないだろう。
私は考え事を切り上げて、本を読むことにした。一昨日、また別の物を借りてきた。少し気になっている小説だ。子供向けの小説にも、たまにこうして気になる題材の本はあるものだ。
…本はいい。時代が変わっていても、古本屋や図書館に行けば大抵読める。前々世大好きだったあの本のシリーズも、この前図書館で見かけた。親は好きになれなくても、本は好きになれる。
変われない私は、変わり続けないものが存在するだけで安心するものだ。人なんて私が死んだらすぐ会えなくなる。本は探せばあるというのに。
私はベッドに座り本を開いて、しばらく読書にふける。…部屋の外からは、洗い物をする音が聞こえた。
ガチャリ、と扉が開いた音がしたのは私は4冊目の本をちょうど読み終わった頃だった。
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卵かけご飯の醤油 - みつるさん» ああ、確かに盛者必衰の方が多分内容的に合ってますね。私、てっきり諸行無常も盛者必衰も同じような意味かと思ってて…今ウィキ先生で調べてみました。どうやら意味合いが違うようです…わざわざご報告、ありがとうございます。修正しますね。 (2019年5月29日 19時) (レス) id: ecf6ee3b9e (このIDを非表示/違反報告)
みつる - 49ページなんですけど…諸行無常ってなんとも言えないという意味だと思います。多分盛者必衰の間違いかと…間違ってなかったらすみません(>_<) (2019年5月29日 18時) (レス) id: d6e134e20f (このIDを非表示/違反報告)
卵かけご飯の醤油 - すすぎさん» そうなんですか…もしよろしければその私の小説と似ているという小説の題名を教えてくれませんか?出来ればその小説と話が被らないようにプロットを書き直すつもりなので… (2019年5月26日 12時) (レス) id: ecf6ee3b9e (このIDを非表示/違反報告)
すすぎ - あまりにも似てるものがあったので..... (2019年5月26日 11時) (レス) id: 28118ed8c0 (このIDを非表示/違反報告)
卵かけご飯の醤油 - ありがとうございます。まさか読みやすいというコメントを貰うとは思っていませんでした…嬉しいです。これからも更新頑張ります。 (2019年5月25日 14時) (レス) id: ecf6ee3b9e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:卵かけご飯の醤油 | 作成日時:2019年5月17日 15時