黙って見ているわけがない。 ページ7
最初は彼女の憎悪に依るものだと思っていた。彼女の置かれた環境は、我々獄卒にそれをやむなしと思わせた。
しかし蓋を開けて見てみれば、彼女を満たしていたのは悲哀であった。後悔と苦痛のジレンマを繰り返し、彼女は死の一歩手前で辛うじて生き延びていた。
要するに…彼女のそんな有り様が、アヤカシの憤怒を呼び寄せていた。これで彼女が記憶の保たない内に事故で死んでみろ、あの会社は数日を待たずに血の海と化していただろう。
まったく感謝してほしいものだと思いながら、私は冷めつつあった朝食に手を付けた。端から彼女が食べ終えられるとは思っていなかったから、彼女のために作ったと言えど元より自分で食べるつもりだった。大食いなので苦ではない。
「…これから、どうなさるおつもりで？鬼灯様。」
「勿論、面倒見ますよ。やるべきことはやらなければね」
モノノ怪になってからではアヤカシから理性が消え失せる。ただし、アヤカシがアヤカシのままならそれはただの妖怪だ。言うなれば、モノノ怪は妖怪の変異体のようなもの。
協力要請をする余地が、ある。人間に近い見目をした我々だけでは喝を入れるにも限度があるし、お灸を据えるのであればとびっきりキツいやつで二度同じことをしでかさないように躾けたい。
アレは、放っておけば同じことを繰り返すモノノ怪製造機だ。
「…まったく、こんな姉がいながらどうしてああなってしまったんだか」
「まぁ…或いは、それが故に、とも。」
薬売りさんは彼女の頭をそっと撫で、彼も改めて食卓に着いた。
彼女の家には食材の類が何もなかった。極力家に居たくない、という思いもあったのかもしれない、この家さえ彼女のテリトリーではなくなってしまっているのだ。
「……とりあえず、まずは会社に休みの連絡でも入れますか。」
「そう…ですね。本人が電話したところで角が立つ」
「今のあの会社には彼女の行動全てが悪である、みたいな風潮がありますからねえ。」
第三者の視点から見てみれば、どちらが加害者でどちらが被害者なのかなんて一目瞭然なんだけれど。井の中の蛙は自分達の置かれている状況を理解することは出来ないのだ。
会社に連絡を済ませたらさくっと空き部屋の荷物でも捨てるか、とこの後のスケジュールを立てる。さっさと全部持っていけばいいのにそうしなかった奴らが悪いのだ。
或いは、そうやって彼女のストレスを助長させていたのかもしれない。
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雪猫と葛(プロフ) - とても面白くて楽しく読ませていただきました(*≧∀≦*)続きが気になって夜しか眠れないです(。・ω・。) (2020年2月11日 19時) (
レス) id: 5feb56ae02 (このIDを非表示/違反報告)
月切 蛍(プロフ) - とっても面白いです！薬売りさんをこれで知ってはまってしまいました！！続き楽しみにしています！ (2020年1月11日 18時) (レス) id: 34c99d5432 (このIDを非表示/違反報告)
ハイサネ(プロフ) - 前にも読ませて頂いており、また見に来てしまいました！続き楽しみに待っています！とても寒くなって参りましたのでお身体ご自愛下さいませ。 (2019年11月30日 13時) (レス) id: 31f88b5e8c (このIDを非表示/違反報告)
來蝶 - 一年程前に読ませて頂いて、また萌えを補給しに戻って参りました！！やべぇ尊い……鬼灯様も薬売りさんも大好きだけど、この夢主ちゃん好きです……… (2019年8月21日 23時) (レス) id: 561cea3de8 (このIDを非表示/違反報告)
いずみ(プロフ) - アナタ神ですか！？本当こんな夢が見たかったのです！本当最の高！続きを、続きをお願いします！！！ (2019年8月19日 22時) (レス) id: 9ee472f10b (このIDを非表示/違反報告)
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