金色の君と数瞬の邂逅 ページ44
私に牙を剥いて襲いかかろうとした化け猫に向かって金の札が飛ぶ。それは私の目前で化け猫の攻撃を弾き返し、チリン、とどこからともなく鈴の音がした。
「真と、理によって」
私と化け猫の間に、いつの間にか私を庇うようにして碧が立っていた。
「剣を──解き、放つッ!!」
景色は一変する。
真っ黒だった駅の周囲は白に入れ替わり目映く光る。札に進行を遮られた化け猫は──私と向かい合ってそこに立つ、金色の人に唸り声を上げていた。
黒白目だなんてただならぬその人と視線を交わしていると、目の前のその人は不意に口を開く。
「…奴と長い時間を共にするつもりならば。それ相応の危険を背負う覚悟があるのか」
…その人は碧とよく似た雰囲気をしていた。
忠告なのか警告なのか、けれど私の答えは揺らがない。
「そんなことよりも、碧が好きなの。」
彼はくわと目を見開き、私を凝視した。私は彼から一切視線を逸らさない。
数瞬の沈黙の後、彼が僅かに笑った。
「いいだろう」
彼が私の前へ歩を進め、がっとその片手で私の両目を覆った。
「奴を、頼む。」
ぐわりと眼球が熱を帯び、咄嗟にきつく目を瞑る。物理的な熱ではない。この熱は何だ?
彼は──碧によく似た彼は、私に何を託した?重みか、圧か、しかし決して悪いものではない。
「A。A!」
はっと我に返ったとき、思わず既視感を覚えたことは私の気のせいじゃあないだろう。
先程灯に起こされたときの彼の表情と今の碧の表情が重なって、私は無意識に彼の頬に手をやる。彼は彼で私の両頬に両手の平をあてがい、その親指で私の目元をなぞった。
「…大事ないか、A」
「ん…うん。大丈夫だよ、碧」
「…すまん。奴が、独断でお前に手を加えた」
「手を…ああ。ううん、これでいいんだよ。二人の助けになれるなら願ったり叶ったり」
「……お前を、巻き込むことになる」
眉尻を下げて不安げな顔をする彼に、私はむにと彼の鼻を摘まむ。
きょとんと目を丸くした碧に、私は小さく笑って鼻を摘まんだその手で彼の頬を撫でた。
「巻き込むんじゃないし、巻き込まれるんでもないよ。
立ち向かうの。一緒に、ね?」
彼は目を見開いて言葉を詰まらせ、そのままぎゅうと私を抱き込む。
ありがとう、と震えた小さな声で御礼が聞こえて、私も彼の背中に両手を回してぽんぽん、とその背中を緩やかに叩いた。
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雪猫と葛(プロフ) - とても面白くて楽しく読ませていただきました(*≧∀≦*)続きが気になって夜しか眠れないです(。・ω・。) (2020年2月11日 19時) (レス) id: 5feb56ae02 (このIDを非表示/違反報告)
月切 蛍(プロフ) - とっても面白いです!薬売りさんをこれで知ってはまってしまいました!!続き楽しみにしています! (2020年1月11日 18時) (レス) id: 34c99d5432 (このIDを非表示/違反報告)
ハイサネ(プロフ) - 前にも読ませて頂いており、また見に来てしまいました!続き楽しみに待っています!とても寒くなって参りましたのでお身体ご自愛下さいませ。 (2019年11月30日 13時) (レス) id: 31f88b5e8c (このIDを非表示/違反報告)
來蝶 - 一年程前に読ませて頂いて、また萌えを補給しに戻って参りました!!やべぇ尊い……鬼灯様も薬売りさんも大好きだけど、この夢主ちゃん好きです……… (2019年8月21日 23時) (レス) id: 561cea3de8 (このIDを非表示/違反報告)
いずみ(プロフ) - アナタ神ですか!?本当こんな夢が見たかったのです!本当最の高!続きを、続きをお願いします!!! (2019年8月19日 22時) (レス) id: 9ee472f10b (このIDを非表示/違反報告)
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