決めるべきは私であるのか。 ページ5
「……私の名前は、AAと言います。とある会社で、長いことOLをしています。」
先ずは軽い自己紹介から。
私は、ぽつりぽつりと話し始めた。
「お二人が泊まった部屋は…ひとつは私の妹の部屋と、もうひとつは私の元婚約者の部屋、でした。今はもう、荷物がそのままでもただの空き部屋です。結論から言うなら、妹に婚約者を寝取られました。私の勤める会社を巻き込んで、私を悪者にする形で…婚約者は私の上司でした。…職場の雰囲気は、最早最悪です」
「……なるほど。貴方の仕事終わりから朝に掛けての記憶が飛んでいるのは、精神的ストレスが貴方の限界を超えているのが原因。」
「…多分。朝はこうやって平常なので普通に会社に行って仕事しますけど、仕事が終わって会社を出る、頃からもう既に記憶が飛んでいることもしばしばで…今日まで生きていられたってことは、多分今までは大丈夫だったんだと思うんですけど」
朝起きたらどこかしら怪我をしていることもあって、と袖を捲る。どこで付けたのかも分からない一本線の切り傷だ。今はもうかさぶたになって治りかけているから包帯で隠す程度だけれど、正直これはこれで職場の人の反感を買っている。
彼らにとって、被害者は私の妹で、私は飽くまで加害者だから。
「なにせ私の妹も同じ職場で働いていますから、如何ともし難いというか…」
「…なるほど。妹さんも、同じ職場に」
「……最初の内は、仲良くやれてるって思ってたんですけど。どうもそう思っていたのは私だけみたいで…ははは、面目ない。」
鬼灯さんも美丈夫さんも、苦笑する私をじっと見つめる。
彼らは私を責めているわけではないのに、そんな視線に妙な焦燥感を覚える。なんだか呼吸が覚束無くて、吐息が震える。ああ、私が、悪いのだ。
「Aさん。貴方は一度会社を辞めなさい」
「……え?」
鬼灯さんのその言葉に、私は目を丸くした。
「一度この会社に勤めたのだから簡単に辞めてはいけない、という責任感は大いに結構。…ですが、その会社が貴方の首を絞めているのであればそこまで尽くす価値もありません」
「………」
「組織というものに属するにしても、人は飽くまで人であることを尊重されなければならない。辞める辞めないの選択は会社から押し付けられるものではなく、貴方自身で決めるべきものです。」
鬼灯さんからの意見に、私の内心はぐらぐらと揺れてしまう。
私は、あそこから逃げてしまってもいいんだろうか。
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雪猫と葛(プロフ) - とても面白くて楽しく読ませていただきました(*≧∀≦*)続きが気になって夜しか眠れないです(。・ω・。) (2020年2月11日 19時) (レス) id: 5feb56ae02 (このIDを非表示/違反報告)
月切 蛍(プロフ) - とっても面白いです!薬売りさんをこれで知ってはまってしまいました!!続き楽しみにしています! (2020年1月11日 18時) (レス) id: 34c99d5432 (このIDを非表示/違反報告)
ハイサネ(プロフ) - 前にも読ませて頂いており、また見に来てしまいました!続き楽しみに待っています!とても寒くなって参りましたのでお身体ご自愛下さいませ。 (2019年11月30日 13時) (レス) id: 31f88b5e8c (このIDを非表示/違反報告)
來蝶 - 一年程前に読ませて頂いて、また萌えを補給しに戻って参りました!!やべぇ尊い……鬼灯様も薬売りさんも大好きだけど、この夢主ちゃん好きです……… (2019年8月21日 23時) (レス) id: 561cea3de8 (このIDを非表示/違反報告)
いずみ(プロフ) - アナタ神ですか!?本当こんな夢が見たかったのです!本当最の高!続きを、続きをお願いします!!! (2019年8月19日 22時) (レス) id: 9ee472f10b (このIDを非表示/違反報告)
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