久しぶり。会いたくなかった。 ページ27
「…A……?」
しばらく聞いていなかった声に、私はぴく、と肩を揺らした。
ああ、なんだかデジャヴのようなものを感じる。恐怖心は妹の時に比べれば大したことないけれど、代わりのように湧き上がるのは…私を信じてくれなかった
「……お久しぶりです、先輩。」
「、…ああ…そうだな。」
久しぶりに見た彼は、なんだかやつれているように見えた。元気がない、と言うか、そもそも疲れ切っている。灯から聞いた話じゃ私の穴埋めに新入社員を何人か雇ったそうだけど、あまり上手くいっていないんだろうか。
──それとも、妹と何かあったのかな。
す、と碧が私の傍に寄り添ってくる。彼は私と先輩が写っている写真を見ているから、目の前のこの人が私の元婚約者で元恋人であるということは…おおよそ、見当がついてるはずだ。
「…A。知り合いか?」
「ん、うん。私の元婚約者で、元恋人で、元上司…昔は良くしてもらってた、会社の先輩なの」
敢えて問いかけてくる碧に意地の悪い、と内心で笑いながらも、そんな彼に乗っかって先輩をつついている私も大概だろうか。
碧の登場に先輩は目を見開き、私と碧を交互に見比べる。かっこいい人でしょう、先輩。貴方と違ってとてもかっこよくて優しくてお茶目で、そうして…とても聡い人なのよ。
「……君に恋人がいるというのは、部長から聞いた。彼が、そうなのか?」
「ああ、いえ。俺はもう一人の方、ですよ。」
「……もう、一人?」
「要するに。今の彼女には、恋人が二人、いるんです。俺と、それから…そちらにお電話をしたもう一人。」
………えっ、今ってそういう設定になってるの?妹に負けず劣らぬわりとガチめの悪女じゃん。
いやまあ二人と同棲してずっと一緒に居るって言ったらやってること大差ないけどニュアンス全然違わない?本当にそういう状況に持ってけるもんなら私ガッツポーズしちゃうけど。何せ対象がこの二人だし。
「……あれだけ会社の人間に迷惑を掛けておいて…何も懲りていないんだな、君は。」
「ずっと言っているはずですよ。私は何もしていない、って。」
「何もしていないわけないだろう!君の妹が泣いていたんだぞ!」
「へえ、それで?何もしていないのにしていない罪を詫びろと?…くだらない。」
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雪猫と葛(プロフ) - とても面白くて楽しく読ませていただきました(*≧∀≦*)続きが気になって夜しか眠れないです(。・ω・。) (2020年2月11日 19時) (レス) id: 5feb56ae02 (このIDを非表示/違反報告)
月切 蛍(プロフ) - とっても面白いです!薬売りさんをこれで知ってはまってしまいました!!続き楽しみにしています! (2020年1月11日 18時) (レス) id: 34c99d5432 (このIDを非表示/違反報告)
ハイサネ(プロフ) - 前にも読ませて頂いており、また見に来てしまいました!続き楽しみに待っています!とても寒くなって参りましたのでお身体ご自愛下さいませ。 (2019年11月30日 13時) (レス) id: 31f88b5e8c (このIDを非表示/違反報告)
來蝶 - 一年程前に読ませて頂いて、また萌えを補給しに戻って参りました!!やべぇ尊い……鬼灯様も薬売りさんも大好きだけど、この夢主ちゃん好きです……… (2019年8月21日 23時) (レス) id: 561cea3de8 (このIDを非表示/違反報告)
いずみ(プロフ) - アナタ神ですか!?本当こんな夢が見たかったのです!本当最の高!続きを、続きをお願いします!!! (2019年8月19日 22時) (レス) id: 9ee472f10b (このIDを非表示/違反報告)
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