共に過ごせば過ごすほど ページ24
実に有意義な日々だった。
相変わらず優しい彼らに甘えながら、私は二人と沢山の思い出を作っていた。色んなところに出掛けて、色んなことをして遊んで、彼らに甘やかされて過ごした。
途中で鬼灯さんが自分にも私が付けた名前が欲しいと言い出して、そんな彼の可愛さに射抜かれつつも彼には灯と名前を付けた。殊更仲良し感が際立つと頬が綻ぶ。
そうして、貯まりに貯まっていた有休の消化を終える。退職するにあたっての手続きは灯が教えてくれた。おかげで私は会社に出社する必要もなく退職願を郵送するに至った。
「はー…私、本当にあの会社辞めるんだなあ。」
「何か心残りでも?」
「うん?ううん。感慨深いなあと思ってさ」
灯の問いかけに私はそう答える。
心残りが何もない、とは正直言い難い。でも、所詮私にはどうにも出来なかったことだと割り切った。あの会社には最早、私を信じてくれる人なんて居なかったから。
「私だけだったら多分、会社を辞めるなんて出来なかったから。灯と碧は私の恩人さんだね」
「いや。俺も、Aと共に過ごすのは楽しいからな」
「Aさん自身が地獄にはあまり居ないタイプですから、退屈はしませんね。」
「へーん私は大好きだって堂々と言えるもんねー!」
「貴方のそれは所詮ライクでしょう」
「えっ、ラブもらってくれるの?」
「頬抓りますよ」
「冗談ですってー」
まあ嘘ではないけどね。
戯けて笑って誤魔化して、私は灯の背中に凭れて手にしていた写真を眺める。昔にあの人と撮った写真。二人は幸せそうに笑っている──特に、私は。
「…それが、噂の?」
「ん?んふふ、そうそう。妹に寝取られちゃった私の元カレ」
ライターを手にした私は火を付け、それから写真の隅からちりちりとそれを炙った。碧は冷たい眼差しでその様子を眺めている。
「…私はね、愛してるよ。二人のこと。だって、私の心を癒やすためにずっと私と一緒にいて、ずっと私の我儘に付き合ってくれたんだもん。
ただ…私のこの気持ちが“愛”なのか“依存”なのか、私にはもう、分からないなあ。」
そうしなければいけなかったことだったというのは、知ってる。
助けるだけ助けてそのままではまた同じことが起こりかねない。だから今回の件に関してはアフターケアが重要だった。
でも、好きなものは好きだ。好きになってしまった。今後彼らと別れて、私は人を好きになれる気がしない。
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雪猫と葛(プロフ) - とても面白くて楽しく読ませていただきました(*≧∀≦*)続きが気になって夜しか眠れないです(。・ω・。) (2020年2月11日 19時) (レス) id: 5feb56ae02 (このIDを非表示/違反報告)
月切 蛍(プロフ) - とっても面白いです!薬売りさんをこれで知ってはまってしまいました!!続き楽しみにしています! (2020年1月11日 18時) (レス) id: 34c99d5432 (このIDを非表示/違反報告)
ハイサネ(プロフ) - 前にも読ませて頂いており、また見に来てしまいました!続き楽しみに待っています!とても寒くなって参りましたのでお身体ご自愛下さいませ。 (2019年11月30日 13時) (レス) id: 31f88b5e8c (このIDを非表示/違反報告)
來蝶 - 一年程前に読ませて頂いて、また萌えを補給しに戻って参りました!!やべぇ尊い……鬼灯様も薬売りさんも大好きだけど、この夢主ちゃん好きです……… (2019年8月21日 23時) (レス) id: 561cea3de8 (このIDを非表示/違反報告)
いずみ(プロフ) - アナタ神ですか!?本当こんな夢が見たかったのです!本当最の高!続きを、続きをお願いします!!! (2019年8月19日 22時) (レス) id: 9ee472f10b (このIDを非表示/違反報告)
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