なんかセコムがつきました。

沢山貴方達に触れさせて。 ページ22

「ち、力強すぎか…。」

「鬼灯さんは特段力持ちなんだ。別に驚くことじゃない」

「建物を持ち上げたこともありますね」

「スケール違いすぎて最早人災だよそれ鬼灯さん」


建物持ち上げちゃうって怪力とかそういうレベルじゃない。この人が本気出したら私多分星の彼方まで吹っ飛べる。途中で空中分解すると思うけど。

鬼灯さんの帽子をずらさないように気を付けながら彼の肩に凭れる。安定性抜群すぎて首に腕を回す必要もないわこれ。帽子に触らないで済むから好都合だけど。


…落ち着く。鬼灯さんの体温が伝わってきて、彼の匂いがして、その腕が力強くて。鬼灯さんの肩に頬を押し付けて甘えつくと、彼の手が伸びてきてふに、と私の頬に緩く触れた。

にへ、と頬を綻ばせて笑えば、今度は私の口許に親指を添えてむにと口端を引っ張ってくる。


「んむぃい…はのひい(楽しい)？」

「わりと。」

「むう。……むいー」


私も鬼灯さんのお顔に手を伸ばして頬に触れ、やり返すように彼の口端に親指を添えてむい、と伸ばす。い、と彼の口から牙が覗いておお、と感心した。大分今更だけど鬼だなあ。

鬼灯さんは不満げに眉根を顰めるけれどされるがままだ。柔く彼の頬を揉んでみると、頬肉は意外と厚め。でもちょっと硬いのは鬼が故なんだろうか。


「……きはにははいまふよ(牙に刺さりますよ)」

「いひひー。ははっへもいいお(刺さってもいいよ)」


指先に刺さってもせいぜい血が出るくらいだし、こう見えて痛みには強い方だ。

へへ、と笑みを零して、私は彼の頬から手を離してそのままぎゅうと彼の首に腕を回して甘えついた。ああ、甘やかしてくれる存在が居るって、こんなに快いものなんだなあ。


「……私に対してそんなふうに振る舞えるのは貴方くらいのものですよ。」

「それを許してくれる鬼灯さんが居る前提の話でしょ？」


私だってそれくらい分かってるよ、と笑って、それでも図々しく甘えて鬼灯さんの肩に顎を乗せる。

理由はどうあれ、特別扱いってのは嬉しいものだ。それこそお姫様にでもなったような気分になってしまう。

二人がそれはそれは素敵な騎士様だから──尚更のこと。本当に勘違いするつもりはないけれど、今のこの時間だけでも浸らせてほしい。

その内私が元気になって、いずれ私が一人で立てるようになったら、きっと貴方達は行ってしまうから。

だから、ね。今だけでも満喫させてくださいな。

私の我が儘と彼らの優しさ→←飽くまで彼らは私と共に。

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