彼ら二人のその思惑 ページ17
逃げようとする私を二人が引き留め、正面切ってその声の元へと歩き出す。二人の手は私の手を握ったまま、まるで周囲に見せびらかすように堂々として。
どくどくと心臓が早鐘を打つ、じわじわと恐怖心に追い立てられて呼吸が浅くなる、碧がもう一度、念押すように私に「大丈夫」と言い聞かせてくれた。
(あの人の時も私は大丈夫だって思ってた)
(だって愛し合ってたはずだったから…でも駄目だった。)
「………お姉ちゃん」
今日一番力いっぱい二人の手を引っ張る。二人はちらと私に目を向け、だけれど微動だにせずに、再び妹に目を向けた。二人は隠れようとも隠そうともしなかった。
私との関係も。私という存在も。
「おや…では、貴方がAさんの妹君でしたか」
鬼灯さんが妹に向かってそう声を掛ける。妹はその性格のわりに可愛らしい見目をしていて、両親にも会社の人達にも、よくよく可愛がられていた。
仕事が出来るかどうかというとノーコメントだけれど、それを補って余りある愛嬌があったのだ、あの子には。アイドルにでも成れば良かったのに、何故かあの子はそうしなかった。
「あの…お姉ちゃんのお知り合いですか?」
「私は所謂彼女の恋人です」
「…俺は…そうさな。そんな彼女に恋している、馬鹿な男ですよ」
……いやあのなんで二人してそんな私に夢中アピールしてるの…?!
私そんなイイ女じゃないんだけどむしろ妹と比べるとよっぽどさもないモブなんだけど、と先程までとは違う意味で震えていると、妹がちらと私に目を向け、それからうるとその大きな瞳を潤ませる。
「ね、お姉ちゃん…わたしのことならいくらでも傷付けていいから、だから、他の人を巻き込むのはやめよう…?」
「…私、は、「巻き込まれただなんてとんでもない。」!」
「私達はこの諍いに自ら混ざりに来たんです。私達を仲間外れにするなんて、そんなつれないこと言いっこなしですよ。ねえ?碧さん。」
「ねえ?鬼灯さん。俺達だって、彼女と…親密な、関係なんですから、ね。」
夢中アピールって言うかなんか二人とも妹煽ってない?
不躾なことを言ってしまえば、元婚約者とこの二人を比べるとその諸々は天地の差がある…最たるものがその容姿。あの人だって決して悪い顔をしていたわけではないけれど、そうなってしまうほど鬼灯さんと碧の顔が良いのだ。なんか私発想がゲス。
ただ、私はあの人の笑顔が好きだった。もう笑いかけてはくれないけれど。
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雪猫と葛(プロフ) - とても面白くて楽しく読ませていただきました(*≧∀≦*)続きが気になって夜しか眠れないです(。・ω・。) (2020年2月11日 19時) (レス) id: 5feb56ae02 (このIDを非表示/違反報告)
月切 蛍(プロフ) - とっても面白いです!薬売りさんをこれで知ってはまってしまいました!!続き楽しみにしています! (2020年1月11日 18時) (レス) id: 34c99d5432 (このIDを非表示/違反報告)
ハイサネ(プロフ) - 前にも読ませて頂いており、また見に来てしまいました!続き楽しみに待っています!とても寒くなって参りましたのでお身体ご自愛下さいませ。 (2019年11月30日 13時) (レス) id: 31f88b5e8c (このIDを非表示/違反報告)
來蝶 - 一年程前に読ませて頂いて、また萌えを補給しに戻って参りました!!やべぇ尊い……鬼灯様も薬売りさんも大好きだけど、この夢主ちゃん好きです……… (2019年8月21日 23時) (レス) id: 561cea3de8 (このIDを非表示/違反報告)
いずみ(プロフ) - アナタ神ですか!?本当こんな夢が見たかったのです!本当最の高!続きを、続きをお願いします!!! (2019年8月19日 22時) (レス) id: 9ee472f10b (このIDを非表示/違反報告)
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